エム・シー・ヘルスケア/ 今後の医療政策と病院経営をテーマに講演
エム・シー・ヘルスケアは、2月16日、本社(東京・港区)にて、オンライン講演会を中心とする「第22回病院の経営を考える会」を開催した。本年は「今後の医療政策と病院経営」をテーマに、共に厚生労働省出身の武田俊彦氏(岩手医科大学客員教授)と鈴木康裕氏(国際医療福祉大学副学長)が講演を行った。
最初に登壇した武田氏は、「コロナを経て、我が国の医療はどう変わるか」と題して講演。同氏はまず「日本は病床数が多いのに、なぜコロナに対応できないのか」という論点について言及。その理由として、平均在院日数が多く、病床・人口比の医療従事者の数が少ない等、構造上の問題を挙げた。他に「利益率が低い経営」や「高齢者比率が高い患者構成」など、医療提供体制の特徴を指摘した上で、今後の方向性として「公民問わず全医療機関がどのような機能を選択するかをトータルで考え、それにふさわしい政策を実行すべき」と論じた。
続いて「医療体制はどう変わっていくか」を取り上げ、「地域での病院の役割分担のために、地域医療構想を今一度、仕切り直し、真のニーズとそれに応えられる体制を明確化する」ことを提言。「医療の方向を改めて考えると、それは『機能分化と連携』ではないか。その意味では地域医療構想で目指した方向は正しかったと思うし、コロナ後に真剣に取り組み、加速させていく必要がある」と述べた。
最後に「地域医療構想の課題と今後」について、仕切り直しの主対象を「外来機能と働き方改革」とした上で、議論のポイントとして「トータルで面的な医療提供」、「医療従事者の集中化と派遣」などを挙げ、「舵を切った以上は、各病院は未来に向けて自身で進路を決め、その先に明るい未来が待っているような政策を皆で考えていくべき」と締め括った。
鈴木氏は、「ポスト・コロナ時代の病院経営」をテーマに講演を行った。同氏は最初にコロナとの戦いの今後について述べ、その中で欧米各国の超過死亡数が前年を上回る中、日本が減少に転じた理由を「マスク着用と3密回避の徹底、適切な肺炎治療」と分析。ワクチン接種については、ブースター接種の必要性を指摘する一方で、今回の反省を踏まえ、国内でのワクチン製造基盤の確立及び感染状況に応じた配布の励行を強調した。
次に「コロナ、ポスト・コロナが病院の経営に与える影響」については、補助金計上の形では2020年に200床以上の病院が前年比黒字となったことに着目。「コロナ病床への転換や患者受け入れ体制の構築が経営安定につながったとみられる。補助金のような施策をいかに迅速にかつ適切に実行するかは重要」と述べた。
さらに同氏は講演第3のテーマを「2022年診療報酬改定」とし、「+0.43%となったが、薬価と材料費合わせて-1.37%であり、実質0.55%くらいないと計算上はプラスマイナスゼロにはならない」と指摘。その他のポイントとして、働き方改革の推進に関連する看護職員夜間配置加算の引き上げ等を挙げた。
最後に人生100年時代の国民皆保険の維持について、「生産年齢層減少への対応策としてのAIやICTの使い方がより問われる。また、医療費の公的支出が多いことは事実なので、どこに医療保険を重点化するかがカギとなる。さらにポスト・コロナ時代の病院経営を考える際、経営層はコロナの影響を見極めた上で、自院への影響を見つめ直し今後を考える姿勢が必要ではないか」と私見を述べた。