キヤノンメディカルシステムズ/肝臓の脂肪量の汎用超音波画像診断装置による正確な測定法の確立の検討に関する臨床研究について発表

 キヤノンメディカルシステムズ(本社︓栃木県大田原市)は、超音波診断装置による超音波減衰法を用いた肝臓脂肪量を測定する機能ATI(Attenuation Imaging)で肝脂肪化の正確な診断を検証するための多施設共同研究「ATiMIC Study (アトミック スタディー︓Attenuation image Multi-Institution Center study)」をサポートする。
日本超音波医学会 用語・診断基準委員会「脂肪肝の超音波診断基準に関する小委員会」(委員長 熊田卓)によると、近年、医学的にも社会的にも肥満、糖尿病、高血圧、脂質代謝異常などの増加を背景に、メタボリック症候群が注目されているが、肝臓への中性脂肪の蓄積(脂肪肝)がメタボリック症候群に高頻度に合併していることが知られている。脂肪肝はアルコール性と非アルコール性の2つに大きく分類され、アルコールに由来しない非アルコール性の脂肪肝を「NAFLD《ナッフルディー》︓nonalcoholic fatty liver disease」と呼ばれ、近年NAFLDの中にも肝硬変や肝癌に至ることのある進行性の一群があることが明らかにされ、これらは非アルコール性脂肪肝炎「NASH《ナッシュ》︓non-alcoholic steatohepatitis」と呼ばれ、注意が必要な病気と認識されるようになってきた。NASHは肝細胞の5%以上に脂肪化を認めることが分かってきており、NAFLD患者全体の約1~2割を占めるとされ、肥満人口の増加に伴いNASH患者も増えていると懸念されている。
超音波診断装置が普及している日本国内では、その脂肪肝のスクリーニングは主として超音波Bモードによる検査が用いられているが、一定の診断基準がなく、各施設がそれぞれの基準で診断しているのが現状である。また、脂肪肝の診断には肝生検がゴールドスタンダードとされているが侵襲性が高く、検体量が肝全体の5万分の1であるためサンプリングエラーの可能性も高く、脂肪肝の全例に施行することは現実的ではない。そのため近年では、脂肪肝の診断、脂肪量の評価手法として、MRIを用いて肝臓内の脂肪と水の比率を測定するPDFF(Proton Density Fat Fraction)や、超音波の減衰を測定する専用装置が肝生検に代わるものとして認識されるようになった。しかし、MRIによる検査は高額で検査に時間がかかるため、あまり普及しておらず、検診等で広く普及している汎用超音波画像診断装置での簡便で標準的な検査方法が求められていた。

キヤノンメディカルシステムズが開発したATI(Attenuation Imaging)は、腹部検査用の標準的なプローブを用いて超音波周波数依存減衰を測定することのできる臨床アプリケーション。ATIをNAFLDの診断に用い、数値で脂肪肝の進行度を把握することで、NASH診断への有用性が期待されている。ATIはAplio i-series(Aplio i900, Aplio i800, Aplio i700)、Aplio a-series (Aplio a550, Aplio a450, Aplio a / Verifia)で使用可能。
本研究は、このATIをPDFFや肝生検等と比較し、正確性を検証することを目的としている。これまでのBモードでは診断が難しかった少ない脂肪量がATIで診断できるようになれば、客観的な数値によって進行度合いの目安とすることができるだけでなく、NASH患者の見落としを減らすことが期待されている。

本研究は、兵庫医科大学 消化器内科 飯島 尋子 教授を研究総括者とし、兵庫医科大学に加えて、以下の国内11施設が参加して2021年9月に発足、10月からデータ収集を開始した。
名寄市立総合病院
学校法人 岩手医科大学
学校法人 東京医科大学
公立大学法人 横浜市立大学
医療法人社団三成会 新百合ヶ丘総合病院
大垣市民病院
日本赤十字社 姫路赤十字病院
国立大学法人 愛媛大学
国立大学法人 佐賀大学
国立大学法人 広島大学
学校法人 久留米大学

問い合わせ先=キヤノンメディカルシステムズ 広報室
TEL:0287-26-5100


その他の記事

アライドテレシスとNTT Com/産業分野におけるセキュリティビジネスの協業開始(24.10.25)

アライドテレシス(本社:東京都品川区)とNTTコミュニケーションズ(本社:東京都千代田区、以下 NTT Com)は、製造や医療など産業分野におけるセキュリティビジネスにおいて協業(以下 本協業)し、双方の事業強化を図り、産業サイバーセキュリティ対策の普及をめざす。 製造業、医療分野では、年々増加するサイバー攻…

NTTコミュニケーションズとTXP Medical/資本業務提携を発表(24.10.23)

NTTコミュニケーションズ(以下 NTT Com)とTXP Medical (以下 TXP Medical)は、資本業務提携に関する契約を締結し、2024年10月にNTT Comに対してTXP Medicalが第三者割当増資により新株式を発行した。  本提携により、NTT Comが提供する秘密計算技術や各種クラウドサービスと、TXP Medicalの医療データの標準化ノウハウ、…

フィリップス・ジャパン/ヘルスケアリーダーへの調査レポート日本版を発表(24.10.21)

フィリップス・ジャパンは10月2日、オランダ大使館(東京・港区)で、調査レポート「Future Health Index 2024日本版」の記者発表を行った。 ヒルス・ベスホー・プルッフ大使の挨拶に続き、ロイ・ヤコブスCEO、ジャスパー・ウェステリンク社長が登壇。日蘭関係にも触れ、市場としての重要性と事業を通じた日本のヘルス…

GEヘルスケア・NTT Com/GEヘルスケア・ジャパンの超音波診断の遠隔トレーニングサービスにNTTコミュニケーションズの映像配信サービスを採用(24.10.15)

GEヘルスケア・ジャパン(以下 GEヘルスケア)とNTTコミュニケーションズ(以下 NTT Com)は、GEヘルスケアの医療関係者向けの超音波画像診断の遠隔トレーニングサービス(以下 本サービス)に、NTT Comが提供する映像配信サービス「Smart vLive®」を採用したことを発表。なお、GEヘルスケアは、2024年10月15日より本サービスの…

オリンパス/フィリピン の Rizal Medical Center と内視鏡専門医の育成に向けて提携(24.10.10)

オリンパスの ASEAN地域における医療用内視鏡関連機器の販売会社である Olympus Singapore Pte. Ltd.(オリンパス・シンガポール)は、このたび、フィリピン保健省が管轄する医療機関、Rizal Medical Center for Digestive and Liver Care(リサールメド消化器・肝臓医療センター、パシッグ市、以下、Rizal Medical Center)…

GE ヘルスケア/函館中央病院で稼働を開始した北海道初のコマンドセンターの成果を確認(24.10.1)

医療課題の解決に取り組むヘルスケアカンパニー、GE ヘルスケア・ジャパン(本社:東京都日野市、以下 GE ヘルスケア)は、社会福祉法人 函館厚生院 函館中央病院(北海道函館市、以下 函館中央病院)と 2023 年 11 月に、北海道で初となる、GE ヘルスケアが提供するコマンドセンターに関する契約を締結した。2024 年 6 月…

デロイト トーマツとインターシステムズ/医療DXの推進へクラウドを活用した 医療情報統合プラットフォームサービスの提供を10月1日より開始(24.9.20)

デロイト トーマツ グループのデロイト トーマツ コンサルティング合同会社(東京都千代田区 以下「デロイト トーマツ」)とインターシステムズジャパン(東京都新宿区 以下「インターシステムズ」)は、ソリューションパートナー契約を締結し、医療機関のDX推進を実現する医療情報統合プラットフォームサービス(以下「Hospi…

富士通/ドラッグ・ロス解消に向け、治験デジタル化加速システムを構築(24.9.20)

富士通は8月26日、ステーションコンファレンス川崎(川崎市)でメディア向け説明会を開催。本説明会では、海外で承認された新薬が日本で使用できない所謂“ドラッグ・ロス”の課題解決に向け、製薬企業や医療機関と共に、治験領域で医療データを活用したエコシステムを構築して、国際共同治験を日本に誘致する取り組みを紹介…

島津製作所/業容拡大に向けて販売・サービスを強化 メキシコで分析計測・医用機器の販売子会社が営業開始(24.9.17)

島津製作所はメキシコに販売子会社を設立し、営業活動を開始した。これまで同国では分析計測機器は米国の子会社を通じて、また医用機器はブラジルの子会社を通じて販売していた。このたび設立したShimadzu México, S. A. de C.V. (略称SMX、シマヅ メキシコ エスエー デ シーヴィ)は、分析計測機器・医用機器の販売…

島津製作所と兵庫医科大学/潰瘍性大腸炎の新たな評価法を開発 同社製液体クロマトグラフ質量分析計での色素剤の血中濃度から病態を定量評価(24.9.13)

島津製作所と兵庫医科大学消化器内科の福井広一教授は、液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS)を活用し、色素剤であるインジゴカルミンの血中濃度から、潰瘍性大腸炎や過敏性腸疾患症候群の病態の指標である腸管粘膜透過性を評価する手法を開発した。今回開発した手法は、患者の負担軽減に加えて、病態の定量的な評価を…

キヤノン/NEDO の大型プログラムに採択された iPS 細胞を用いた人工血小板製造プロジェクトに参画(24.9.12)

キヤノンは、京都大学 iPS 細胞研究所(CiRA)を中心とする研究開発プロジェクト「高品質人工血小板の連続製造システムの研究開発とその実用化」に参画する。本プロジェクトはこの度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募した事業「経済安全保障重要技術育成プログラム/有事に備えた止血製…

EIZO/医用レコーダーがネットワーク経由での保存に対応、映像の視聴・管理・編集が可能なソフトウェアも発売(24.9.11)

EIZO(本社:石川県白山市)は、販売中の4Kメディカルイメージングレコーダー「CuratOR MIR-1(以下MIR-1)」のバージョンアップ版と、メディカルイメージング視聴・管理ソフトウェア「CuratOR MIR Browser(以下MIR Browser)」を2024年9月5日に発売。価格はオープン価格。 MIR-1は、ヘルスケア市場における手術映像の…

日立ハイテクと韓国 Gencurix 社/がん分子診断事業に関する協業を開始(24.8.28)

日立ハイテク(以下、日立ハイテク)と大韓民国(以下、韓国)の Gencurix, Inc. (ジェンキュリックス社;以下、Gencurix 社)は、がん分子診断事業に関する協業を開始する。この協業により、日立ハイテクが長年培ってきた体外診断分野における研究開発、モノづくりでの経験およびデジタル技術と、Gencurix 社が有するがん領域…

清水建設/医療施設 DX システム「eye MIRU」で外来診療業務を効率化(24.8.27)

清水建設と社会医療法人誠光会はこのほど、外来診療業務の効率化に寄与する医療施設 DX システム「eye MIRU」を、誠光会が運営する淡海医療センター(滋賀県草津市)で 4 か月間実証運用し、病院職員の生産性向上、外来患者の利便性向上など、所期の導入効果を確認した。清水建設は本年 9月から、本システムの普及に向けて…

島津製作所、第一工業製薬、順天堂大学堀江教授の3者/生理活性物質の機能性解明に関する技術連携 視覚的な記憶力を維持する「ナトリード」などを研究(24.8.27)

島津製作所および第一工業製薬、順天堂大学大学院医学研究科の堀江重郎教授は、食品・医薬品に含まれる生理活性物質の機能性解明の手法に関する技術連携協定を結んだ。本技術連携では、第一工業製薬のグループ会社であるバイオコクーン研究所が独自製法で得た、カイコハナサナギタケ冬虫夏草(以下、カイコ冬虫夏草)を研…

TOPへ