島津製作所/国立循環器病研究センターと共同で東アジア特有の脳血管障害リスク遺伝子の検出技術を世界で初めて確立

島津製作所/国立循環器病研究センターと共同で東アジア特有の脳血管障害リスク遺伝子の検出技術を世界で初めて確立

 国立循環器病研究センター(大阪府吹田市、略称:国循)の脳神経内科猪原匡史部長、服部頼都医長、吉本武史医師、齊藤聡医師らの研究グループおよび島津製作所(京都市)は、世界で初めてRNF213遺伝子p.R4810K多型(RNF213という遺伝子がコードするタンパク質の4810番目のアルギニンがリジンに変異する遺伝子多型、以下「本多型」)を血液1μLから直接リアルタイムPCR法によって検出できる技術(以下「本技術」)を確立した。本多型は、脳血管障害リスク遺伝子の中でも、脳梗塞発症との関連が最も強いと考えられている。2021年9月1日から受託分析子会社の島津テクノリサーチ(京都市、以下島津テクノリサーチ)は、国循との共同研究に参加する医療機関に向け、研究目的に限定した、血液検体中の本多型の有無を検出する受託分析を開始する。

脳卒中の死亡者は年間11万人にのぼり、その7-8割を占めている脳梗塞は寝たきりや認知症の主要因で、直接の医療コストは年間 1兆円を超えている。我が国では欧米諸国と比べて脳梗塞の発症頻度が特に高く、欧米人とは異なる遺伝的要因の存在が疑われていた。
猪原部長らの研究チームは、もやもや病(*1)の発症に関係すると報告されている本多型が、脳の比較的太い血管の動脈硬化(*2)を主因としたアテローム血栓性脳梗塞の強力な感受性遺伝子(*3)であることを2019年に世界で初めて報告した (Okazaki S, et al. Circulation 2019)。これまでの解析結果によると、本多型は、日本人健常者の2-3%、脳梗塞患者の約5%、頭蓋内の大血管狭窄 (もしくは閉塞) に起因する脳梗塞患者の25%が有している。本多型は脳梗塞の病型診断に重要であり、我が国のみならず、東アジア各国の医師・研究者から、本多型評価システムの確立が求められている。

(*1)もやもや病:脳の血管に生じる病気で、内頚動脈という太い脳血管の終末部が細くなり異常な血管網が形成されることを特徴とする疾患である。脳出血や脳梗塞として発症することで知られる。
(*2)動脈硬化:「動脈と呼ばれる血管の壁が厚くなったり、硬くなったりして本来の構造が壊れ、働きが悪くなる病変」の総称。
(*3)感受性遺伝子:単一遺伝子病の原因遺伝子のように遺伝子に変異があると必ず発症するというものではなく、変異があると発症しやすくなったり、逆に発症しにくくなったりする遺伝子。

研究グループと島津製作所は、リアルタイムPCR装置を用いて、1µLの血液から実質1時間以内で本多型の有無を検出できる技術を確立した。国循と島津製作所は、本技術に基づく脳梗塞のリスク評価に関する特許を共同で申請した。またこの度、島津テクノリサーチによる本多型検出のための受託分析サービスを実現した。
島津製作所は本技術向けに独自のAmpdirect™技術を用いてPCR検査試薬を開発しており、国循および島津テクノリサーチに提供していく。同技術は「生体試料に含まれるたんぱく質や多糖類などのPCR阻害物質の作用を抑制できるため、DNAやRNAを抽出・精製することなく、生体試料をPCRの反応液に直接添加できる」というもの。島津製作所は、これまでにAmpdirect™技術を用いて、腸管出血性大腸菌やサルモネラ属菌、赤痢菌、ノロウイルス、新型コロナウイルスなどの病原体検出試薬を開発している。

これまで、一部の大学等の研究機関を除き、本多型の検出は困難であった。今後本受託分析により、本多型の有無の実態、本多型に関連する病態の解明が、飛躍的に加速することが期待される。なお今回の受託分析は、患者の同意が得られた症例のうち、国循との共同研究に参加した医療機関からの依頼のみが対象。一般からの分析希望は対象外となっている。今回は、国内の医療機関を対象に研究目的に限定した受託分析となるが、研究グループは海外展開も目指していく。日本発の知見によって東アジア諸国の診療水準の向上に貢献していく。

問い合わせ先=島津製作所 コーポレート・コミュニケーション部 広報グループ 
TEL: 075-823-1110


その他の記事

第44回医療情報学連合大会/3800名以上の参加者が「デジタルヘルスの新未来」を論じあう(24.12.20)

 第44回医療情報学連合大会(第25回日本医療情報学会学術大会)が2024年11月21~24日、福岡国際会議場・福岡サンパレス(福岡市博多区)で開催された。大会長は中島直樹氏(九大)。同大会は、現地開催に加えオンライン配信を含むハイブリッド方式による開催となった。  22日に行われた開会式では、大会長の中島氏が挨…

米盛病院&シーメンスヘルスケア/高度な医療提供により地域貢献目指すパートナーシップ締結(24.12.20)

社会医療法人緑泉会とシーメンスヘルスケアは11月12日、緑泉会 米盛病院 米盛ラーニングセンター(鹿児島市)にて合同記者発表会を開催。両者が高度な医療提供による地域への貢献を目指し14年間のパートナーシップを締結したことを発表した。  冒頭、シーメンスヘルスケア代表取締役の櫻井悟郎氏が登壇し、「シーメンス…

NEC/医療DX推進を目指し「ヘルスケア生成AI活用プラットフォーム」を提供開始(24.12.20)

 NECは、病院経営の最適化や持続可能な地域医療の実現に向けた医療機関及び、関係機関におけるDX推進を目指し、地域医療における生成AI早期実装を支援する「ヘルスケア生成AI活用プラットフォーム」を2025年2月から順次提供開始する。また同時に、本サービスの拡充と新たな価値創造を様々なパートナーとともに実現する「B…

NEC/経口投与型の個別化がんワクチン「NECVAX-NEO1」の第Ⅰ相臨床試験の中間結果をESMO免疫腫瘍学会2024で発表(24.12.12)

 NECグループでAIによる創薬の臨床開発を手掛けるNEC Bio Therapeutics (NECバイオセラピューティクスは、固形がんにり患した患者を対象に、経口投与型の個別化がんワクチン「NECVAX-NEO1」と免疫チェックポイント阻害剤(CPI)を併用した第Ⅰ相バスケット臨床試験を実施している。同社はこのたび、ワクチン投与24週間後の…

ニコン/欧州分子生物学研究所と次世代の研究を支える技術開発パートナーシップを締結 (24.11.28)

 ニコン(以下、ニコン)は、欧州分子生物学研究所(European Molecular Biology Laboratory、以下「EMBL」)と、技術開発パートナーシップを新たに締結した。 この協力関係によりニコンは、次世代の顕微鏡技術の開発を加速し、グローバルな研究コミュニティが直面する複雑な課題に対するソリューションを提供していく。 …

日本核医学会&日本核医学技術学会/学術総会&総会学術大会を合同開催、核医学の可能性を訴える(24.11.25)

第64回日本核医学会学術総会と第44回日本核医学技術学会総会学術大会が11月7日~9日の3日間、パシフィコ横浜 会議センター/展示ホールAで共同開催された。第64回日本核医学会学術総会の会長は橋本 順氏(東海大)、第44回日本核医学技術学会総会学術大会の大会長は森 一晃氏(虎の門病院)が務めた。大会テーマは「築く・…

NTTコミュニケーションズ/リアルタイム映像伝送等を利用した災害医療体制の強化に関する実証を開始(24.1121)

ドコモグループの法人事業ブランド「ドコモビジネス」を展開するNTTコミュニケーションズ(以下 NTT Com)は、NTTデータ経営研究所が設立したコンソーシアム(以下 本コンソーシアム)が実施する「徳島県におけるリアルタイム映像伝送等を利用した災害医療体制の強化に関する実証」(本実証)に参画する。本実証では、徳島県にお…

島津製作所/「Trinias series with SCORE Opera」がRed Dot Design Award Brands & Communication Design部門Interface & User Experience Designカテゴリーにて初受賞(24.11.1)

島津製作所の血管撮影システム「Trinias series with SCORE Opera」が、「Red Dot Design Award 2024」のBrands & Communication Design部門の Interface & User Experience Designカテゴリーにて受賞した。この部門での同社製品の受賞は初めて。 「Red Dot Design」は、ドイツのノルトライン・ヴェストファー…

キヤノン/「2024 年アジアデザイン賞」にてX線CT診断装置「Aquilion ONE / INSIGHT Edition」銀賞受賞(24.11.1)

銀賞を受賞した「Aquilion ONE / INSIGHT Edition」は、高機能化に伴い操作が複雑化しているCT検査のワークフローを、AI を活用して開発した自動化技術によりサポートするフラッグシップCTである。内蔵のキヤノン製カメラで撮影した映像をもとに患者の体位を検出し、ポジショニングを簡便に素早く自動で算出する。従来は手…

アライドテレシスとNTT Com/産業分野におけるセキュリティビジネスの協業開始(24.10.25)

アライドテレシス(本社:東京都品川区)とNTTコミュニケーションズ(本社:東京都千代田区、以下 NTT Com)は、製造や医療など産業分野におけるセキュリティビジネスにおいて協業(以下 本協業)し、双方の事業強化を図り、産業サイバーセキュリティ対策の普及をめざす。 製造業、医療分野では、年々増加するサイバー攻…

NTTコミュニケーションズとTXP Medical/資本業務提携を発表(24.10.23)

NTTコミュニケーションズ(以下 NTT Com)とTXP Medical (以下 TXP Medical)は、資本業務提携に関する契約を締結し、2024年10月にNTT Comに対してTXP Medicalが第三者割当増資により新株式を発行した。  本提携により、NTT Comが提供する秘密計算技術や各種クラウドサービスと、TXP Medicalの医療データの標準化ノウハウ、…

フィリップス・ジャパン/ヘルスケアリーダーへの調査レポート日本版を発表(24.10.21)

フィリップス・ジャパンは10月2日、オランダ大使館(東京・港区)で、調査レポート「Future Health Index 2024日本版」の記者発表を行った。 ヒルス・ベスホー・プルッフ大使の挨拶に続き、ロイ・ヤコブスCEO、ジャスパー・ウェステリンク社長が登壇。日蘭関係にも触れ、市場としての重要性と事業を通じた日本のヘルス…

GEヘルスケア・NTT Com/GEヘルスケア・ジャパンの超音波診断の遠隔トレーニングサービスにNTTコミュニケーションズの映像配信サービスを採用(24.10.15)

GEヘルスケア・ジャパン(以下 GEヘルスケア)とNTTコミュニケーションズ(以下 NTT Com)は、GEヘルスケアの医療関係者向けの超音波画像診断の遠隔トレーニングサービス(以下 本サービス)に、NTT Comが提供する映像配信サービス「Smart vLive®」を採用したことを発表。なお、GEヘルスケアは、2024年10月15日より本サービスの…

オリンパス/フィリピン の Rizal Medical Center と内視鏡専門医の育成に向けて提携(24.10.10)

オリンパスの ASEAN地域における医療用内視鏡関連機器の販売会社である Olympus Singapore Pte. Ltd.(オリンパス・シンガポール)は、このたび、フィリピン保健省が管轄する医療機関、Rizal Medical Center for Digestive and Liver Care(リサールメド消化器・肝臓医療センター、パシッグ市、以下、Rizal Medical Center)…

GE ヘルスケア/函館中央病院で稼働を開始した北海道初のコマンドセンターの成果を確認(24.10.1)

医療課題の解決に取り組むヘルスケアカンパニー、GE ヘルスケア・ジャパン(本社:東京都日野市、以下 GE ヘルスケア)は、社会福祉法人 函館厚生院 函館中央病院(北海道函館市、以下 函館中央病院)と 2023 年 11 月に、北海道で初となる、GE ヘルスケアが提供するコマンドセンターに関する契約を締結した。2024 年 6 月…

TOPへ