MeWCAシンポジウム2014/ICTの利活用やクラウド化による医療・介護での効果を討議
医療福祉クラウド協会(MeWCA・ミューカ)は、5月15日、文京シビックホール(東京・文京区)で「MeWCAシンポジウム2014」を開催した。
MeWCAは、2013年に日本医療情報ネットワーク協会(JAMINA)から名称を変更した団体。国民健康情報を安心、安全な環境で活用するナショナルクラウドを国際標準に則り、産学官連携の中立的な立場で開発、運用、実現に導く団体として活動を進めている。
プログラムは「基調講演・理事講演」「医療分野における各省庁の取り組み」「パネルディスカッション・介護クラウドが切り開く日本の未来-超高齢社会に向けて医療と介護をつなぐ」「クロージング」の4つのセッションに分かれて行われた。
■第1セッション「基調講演・理事講演」
基調講演は、稲田修一氏(東大先端科学センター)が、「医療・健康管理を変えるビッグデータ活用」をテーマに次のように述べた。「単に寿命を延ばすのではなく健康寿命を延ばすことが必要だ。そのためにビッグデータを活用し、病気予防のための健康管理・医療の推進およびカスタマイズが重要となる」。
理事講演では、水島 洋氏(国立保健医療科学院)が、「希少疾患・難病と災害のためのクラウド型情報システム」について講演し、次のように述べた。「希少疾患は薬の開発や患者の支援も遅れている。その対策としてWebベースの患者登録システムやデータ項目の国際標準化が必要。また災害対策にはクラウドによる地域医療連携が必須である」。
■第2セッション「医療分野における各省庁の取り組み」
永山純弘(内閣官房)、渡辺克也(総務省)、鯨井佳則(厚生労働省)、久保田裕子(経済産業省)の4氏が、行政の立場から医療分野での各省庁の取り組みを述べた。
永山氏は「医療・健康分野のIT戦略について」の中で、世界最先端IT国家創造宣言を巡る経緯、健康・医療分野における今後のIT戦略の方向等を説明した。
渡辺氏は「スマートプラチナ社会の実現に向けて」の中で、超高齢社会でのICT利活用の達成目標として、「活力ある超高齢社会の実現」「ICTを核とした新産業創出とグローバル展開」「老若男女参画社会実現と生活の質の向上」を挙げた。
鯨井氏は「ICTを活用した医療・介護連携の推進について」をテーマに、医療情報ネットワーク推進普及について全国で160件の地域医療ネットワークが形成されている現状を示し、「より広域・多数の医療機関による情報共有の実現」「費用対効果の高い廉価なシステム導入」「在宅医療・介護へのネットワークの拡大」が課題だとした。
久保田氏は「健康寿命延伸産業の創出に向けて」をテーマに、「日本再興戦略とヘルスケア産業施策の位置づけ」「健康関連産業の振興」「医療の国際展開」を説明した。特に「日本式医療拠点のネットワーク化」の例として、ミャンマー、タイ、シンガポールなどASEAN諸国への医療進出の例を挙げた。
■第3セッション「パネルディスカッション」
「介護クラウドが切り開く日本の未来」をテーマに開かれたパネルディスカッションでは、高齢者専門の医療機関「ナラティブホーム」理事長の佐藤伸彦氏、NPO法人神奈川県介護支援専門員協会副理事長の松川竜也氏、オムロンヘルスケアの大川力也氏、北大大学院保健科学研究院の岡崎光洋氏をパネリストに進められた。在宅医療におけるICTの利点、医療・介護サービスにおけるICT活用の意味、企業によるヘルスケア製品・医療機関向け事業の展開、医介連携におけるお薬手帳情報の活用など、それぞれ専門の視点から、ICT普及への提言が行われた。
■第4セッション「クロージング」
最終セッションでは、医療福祉クラウド協会理事長の御園愼一郎氏が2013年のMeWCAの活動および2014年の活動予定を報告。同協会理事の入沢 厚氏は、医療福祉クラウドの活動状況を示し、国民・医療福祉関係・APベンダー・国関係に分けて、それぞれに対応するMeWCAクラウドのあり方を示した。