日本医療情報学会春季学術大会/地域医療連携や医療情報の活用について議論を深める
6月5~7日の3日間、岡山コンベンションセンター(岡山市)において、第18回日本医療情報学会春季学術大会「シンポジウム2014 in 岡山」が開催された。
大会長は香川県立中央病院院長の太田吉夫氏、テーマは「医療情報の共有のかたち~可用性、継続性、将来性の視点から見た医療情報ネットワーク」。
今回の春季学術大会では、大会長講演の他、チュートリアル5セッション、特別講演1題、大会企画3セッション、教育講演2題、一般口演やポスター発表、企業展示などが行われ、参加者の総数は1300名を超えた。
大会2日目には、大会長講演として太田氏による「医療安全と病院情報システム」が行われた。
太田氏は、1999年に国内で起きた2件の著名な医療事故の事例と、同年米国でIOM(Institute of Medicine)が発表した「To Err is Human(人は誰でも間違える)」という報告書の内容を紹介。そして、病院情報システムが医療安全に貢献するのではないかという当時の期待感について説明。それから15年経った現在の状況について、2011年にIOMが発表した報告書「Health IT and Patient Safety:Building Safer Systems for Better Care」の内容を紹介しながら、病院情報システムが医療安全にどれだけの貢献を果たしているのかを説明した。
また、同日行われた大会企画1では、同大会で初の試みとなる「Year in Review」が行われた。これは、2013年に内外の医学生物学の学術誌に発表された論文から、医療情報学分野における重要な研究論文や、会員が今後論文を作成するに当たって大いに参考となる論文を紹介するもの。
まず、医療情報学会編集運営委員会委員長の仲野俊成氏(関西医大)が、学術雑誌「医療情報学」に関して、2013年の総括と論文を紹介。そして、オーガナイザーを務める澤 智博氏(帝京大)が、海外の学術誌「Applied Clinical Informatics(ACI)」、「Methods of Information in Medicine(MIM)」、「Journal of American Medical Informatics Associations(JAMIA)」、それぞれのEditor-in-Chiefが日本の研究者に向けて作成したリストをもとに論文を紹介。さらに、春季学術大会Year in Review選考委員会が「NEJM」、「JAMA」、「Nature」、「Science」などから選定した論文を紹介した。なお、紹介された論文については、医療情報学会会員専用サイトにリンクが張られている。
大会最終日には、特別講演として次期大会長である中谷 純氏(東北大)が「東北医療情報ハイウェイ計画」と題して講演。宮城における5つの情報基盤である、①みやぎ医療福祉情報連携基盤(MMWIN)、②東北大学病院情報基盤、③東北メディカル・メガバンク情報基盤、④東北大学大学院医学系研究科情報基盤、⑤臨床研究推進センターTR情報基盤について紹介した。
中谷氏は、これら5つの情報基盤について「社会情報循環により、巨大情報を生成し、それを最適活用する仕組みを作ることで、地域医療連携の礎を作ると同時に、最先端研究拠点の下地を形成するという統一的視点に基づいてシステムを構築した」と述べ、「東北医療情報ハイウェイ」と名付けた各情報基盤の概要を説明した。同氏は、この東北医療情報ハイウェについて、将来的には、国内他プロジェクトと協力・連携・保管・統合・終結させ、国家の情報基盤としての「日本医療情報ハイウェイ」の構築や、国際標準の日本発信、新輸出産業の創生につなげていきたいと述べた。
次回の第19回日本医療情報学会春季学術大会「シンポジウム2015in 仙台」は、中谷氏を大会長に、2015年6月11~13日の3日間にわたり、宮城県仙台市・仙台国際センターで開催予定。