国際モダンホスピタルショウ 2014
医療・福祉・介護関連製品に関する国内最大の展示見本市「国際モダンホスピタルショウ 2014」が、東京ビッグサイトで7月16~18日の3日間開催された。来場者総数は8万260人。6ゾーンに分かれた会場の中でも、面積・展示内容など一際目立っていたのが「医療情報システムゾーン」であり、電子カルテシステムが33社を超える企業から出展・実演された。加えて、クラウド対応システムや地域包括ケアシステムの展示も来場者の注目を集めた。
出展社は、397社と過去最多を記録した。海外からは、中国15、マレーシア2、スイス・カナダ・台湾・韓国各1の21社が出展した。
<オープニングセッション>
初日に行われたオープニングセッションでは、日本病院会会長の堺 常雄氏が「迫られている病院の選択と決断」をテーマに講演を行った。現在の日本医療の評価や医療を取り巻く環境の変化、2014年度診療報酬改定による経済誘導、アベノミクスの医療への影響や国の医療改革への懸念などについて、日本病院会としての考えを示した。また、消費税に対して「そもそも税を診療報酬で手当てすることの矛盾を解消すべきだ」と述べた。今病院に求められることとして、「地域連携を進め、地域包括ケアの中で果たすことのできる自院での役割を明確にする」ことだと明言した。
<公開シンポジウム>
公開シンポジウムは「災害に打ち勝つ病院」をテーマに、基調講演を含む5講演とシンポジウムが行われた。演者は有賀 徹氏(昭和大病院)、野口英一氏(東京防災救急協会)、金 愛子氏(石巻赤十字病院)、牧沢 覚氏(都立多摩総合医療センター)、山口芳裕氏(杏林大)の5氏。有賀氏は基調講演で、病院が被災した場合を想定した、①病院の防災に関する仕組み、②防災訓練について、③地域における防災活動(自治体などによる)との関係性について語った。野口氏は病棟で火災が発生した時に勤務者はどう行動したらよいかを考えた病院における防災訓練のあり方、金氏は東日本大震災による被災経験を通して得た病院の整備、訓練等の備え、災害時対応の考え方、牧沢氏は震災後の計画停電から学んだ同センターの事業継続計画(BCP)、山口氏は災害時、DMATに地域の行政の枠組みの中で活動してもらうための方策について、それぞれ講演した。
<スペシャルセッション>
スペシャルセッションでは、嶋田 元氏(聖路加国際病院)が「質指標を用いた組織的改善と今後」を講演。同院でのQIの捉え方を明確にした上で、QI委員会を始め組織的な医療の質向上への取り組みと事例を紹介。また「質改善活動で医療現場に負荷がかかるのは問題。ITの有効活用により、いかに各職種の業務フローを妨げずに質改善を進めるかを考えていく必要がある」と語った。橋本隆子氏(国立病院機構本部総合研究センター)は「臨床指標を用いたPDCAサイクルに基づく医療の質の改善に向けた取り組みの実例と課題」の中で、PDCAに基づく医療の質の改善活動の体制とシステム構築の経験から、「医師や医療スタッフの努力に依存していては、医療の質改善は継続しない。業務のシステム化とチェック機能の構築が重要」と述べた。
<出展者プレゼンテーションセミナー>
出展者が主催する同セミナーは、26題行われた。森川富昭氏(慶大大学院)による「2014年診療報酬改定の影響分析と医療機関の対応」では、同氏がエーアイエスと共に開発したレセプト分析装置およびレセプト分析プログラムを紹介。「世界のヘルスケアは大きく動いており、これからはデータに基づく経営戦略構築が不可欠。これからの医療機関には、自院のデータを解析する仕組み作りが必要だ」と述べた。寺島正浩氏(心臓画像クリニック(CVIC)飯田橋)は「新しい専門ドックとしての心臓MRIドック」の中で、最近各地の病院で行われている心臓CT検査の問題点を解説し、特に被ばくと造影剤の問題からCTは心臓ドックには不向きであると述べ、これらの課題を解消し、心臓ドックを行うならばMRIを活用すべきであると語った。高林克日己氏(千葉大)は、「超高齢社会時代における医療情報システムのあり方」をテーマに、「このままの医療を続ければ2025年以降の超高齢社会では医療資源、医療財源とも枯渇する」と、今後の深刻な医療状況を分析。さらに医療情報システムは情報共有・連携の点から、在宅医療を中心とした多職種連携の必須のアイテムになり、医療の進歩に寄与することになるだろうと述べた。
<トピック>
ホスピタルショウカンファレンスのトピックでは、菊地 眞氏(医療機器センター)「医工連携の更なる取り組みに向けて」、土屋博史氏(経済産業省)「経済産業省における医療機器産業政策について」の2講演が行われた。菊地氏は医工連携支援の方向性について、「全国の支援機関をネットワーク化し、シームレスな支援を実現すべきだ」と強調。土屋氏は新たな医療分野の研究体制の下での、オールジャパンでの医療機器開発の重要性を述べた。
<ITフォーラム>
やはりタブレット端末への注目度は高かった。ITフォーラムでは、天谷雅行氏(慶大病院)が「タブレット端末による診療の効率化と質の向上について」と題し、同院におけるモバイル端末活用の概要と現況を語った。その中で、同院に導入したスマートフォンで電子カルテ機能の一部を利用する「PocketChart」について、「新たな業務スタイルを生み出し、医療現場が大きく変わる可能性を秘めている」と述べた。滝沢礼子氏(高橋病院)は「モバイルデバイスを活用した地域包括ケアシステムの実現」の中で、モバイルデバイスの活用例として、糖尿病患者によるスマートフォンを活用した血糖値自己測定管理の概要について説明した。
<注目のブース紹介>
●東芝メディカルシステムズ/東芝医療情報システムズ
東芝ヘルスケア事業グループとして、「予防」「診断・治療」「予後・介護」に「健康増進」を加えた4分野をヘルスケア領域として捉えたソリューションや製品を展示。そのコンセプトに基づき、在宅医療介護向け多職種種間コミュニケーション支援システム「音声つぶやきSNS」を初展示。同システムはスマートフォンを使うSNS形式の音声入力ツールで、より容易な形で多職種による主観的な患者情報を共有できる。その他、PCやタブレット端末と連携し、複数の生体情報を並行して連続計測・送信・保存できる生体上方センサ「Silmee」を新たに展示。また従来からの医療分野製品では、薬剤登録システム「Medi Regi」を初展示した。同製品は、薬剤バーコードをスキャナで読み取り、その情報が表示された画面確認により、指示内容との照合など監査業務を支援する。
●ソフトマックス
統合型電子カルテシステム「PlusUs-カルテ」を展示。電子カルテ、オーダリング、看護支援が一体となったパッケージシステムであり、情報を1つのデータベースに合理的に一元管理することによって、スムーズな運用と情報の利活用が行える。医事会計システム「PlusUs-医事」も同時展示された。
●アライドテレシス
「統合院内LAN」「止まらない」「安全・安心」と「容易な運用管理」をキーワードに、院内ネットワークの構築や管理・運用に関するソリューションを紹介。実機によるデモンストレーションでは、アライドテレシスコンバージドシステムやネットワークの仮想化などを展示した。また、来場者に好評の、院内ネットワークに関する無料相談も例年通り実施し、多くの来場者が足を運んでいた。
●東陽テクニカ
画像診断を支援するためのフィルムレスソリューションとして、胸部X線骨組織透過ソリューション「ClearRead」シリーズやデジタルマンモグラフィビューア「MammoRead」シリーズ、整形外科デジタルプランニングツール「OrthoPlanner」などを出展した。「ClearRead」シリーズは、肺組織における結節や異常陰影の検出を支援でき、来場者の関心を集めた。
●パナソニックヘルスケア
電子カルテを中心にする病院向け、診療所向けソリューションをメインにする展示だが、参考出品ながら注目したいのが、在宅医療支援システム。診療所用電子カルテ(Medicom-HRⅢ+往診端末)や保険薬局用電子薬歴システム(PharmesⅡ-MX)の他、在宅医療に関わるスタッフの端末からの入力情報を情報共有サーバを中心に結び付けて、医師、看護師、薬剤師、ケアマネージャー、ホームヘルパーの業務の質を向上させることが可能となる。
●PSP
統合検査情報システム「PSA」を中心に展示。電子カルテシステムと連携し、印刷文書のQRコードの患者情報を読み取って文書情報を自動登録するなど、手続き書類のデータ化管理を可能にする文書管理オプションが注目を集めていた。また放射線科データやアレルギー、禁忌、投薬情報を各医療機関で共有する地域連携システム「PSA+(プラス)」は、新たに「Ensemble」「Cache」(インターシステムズ)との連携が可能となった。
●テラリコン・インコーポレイテッド
PACSビューワとしての機能も持つ3Dワークステーション「iNtuition REVIEW」を中心に展示。参考出品の形で、現在開発中の3D画像アプリケーションの新技術の解説も行った。ステントによる治療支援を目的に、ステントを画像上でバーチャル的に構築するバーチャルステント機能や、CTで再構成した心筋画像にSPECT画像をフュージョンさせる新機能を紹介していた。
●日立製作所/日立メディコ
院内システム、セキュリティ、経営支援、地域医療/介護、電子カルテ/医用画像、健康・保健指導、ヘルスケアの取り組みのブースに分けて、各種製品や提案を展示。電子カルテ部門では、参考出品された有床診療所・小規模病院向けWeb型電子カルテシステム「Open-Karte AD」が注目を集めた。同システムは、現在の市販製品よりも導入コストを抑制した点が特長の1つで、ログインユーザーや職種に応じて最適な画像表示が可能。新たに搭載したアシストビュー機能により、職種や業務ごとに必要な情報をまとめてスピーディに確認できる。ヘルスケア分野では「ヘルスケアデータ統合プラットフォーム」を参考展示。院内の各部門や各施設に散在する文書や画像データをXMLやPDF、DICOMなどによって一元管理し、「患者名」「検査種別」「疾患」など任意の項目によるデータ検索ができるようにしている。
●EIZO
RadiForceシリーズを展示。手術室・内視鏡向けモニター「LX470W」は47インチの大型モニターで、PACSからの医用画像の参照および手術室のリピーターモニターとしても使用が可能。医用画像の忠実な再現、ノイズ軽減による高鮮鋭度、視線に合わせて使えるミラー映像など多機能を搭載し、医療現場での利便性を追求している。
●NEC
電子カルテシステム「MegaOak」シリーズ、地域医療連携ネットワークサービス「ID-Link」を活用した地域包括ケアへの取り組みを中心に紹介。今回小誌が注目したのは、医療情報とクリニカルパス分析の可視化を実現したMegaOak DWHパス分析オプション。済生会熊本病院と共同研究、NECが開発したもので、記録や医事、パス等のデータを統合し、コストやバリアンス、在院日数等の分析を即座に可能にしている。
● インターシステムズジャパン
同社のデータベースエンジン「Cashe」と医療情報連携基盤「Ensemble」「HealthShare」と、それらを活用した各医療施設における事例を紹介。また、PSPやコア・クリエイトシステム、日本ダイナシステムなど、同社のパートナー企業が「Cashe」等を活用して開発した各種の医療情報システムの展示デモを合わせて行った。
●富士フイルムメディカル
診療統合ソリューション・診療部門ソリューション、医療連携ソリューションの3部門に分けて製品を展示。診療統合ソリューションの筆頭として、次世代統合プラットフォーム「CISワークステーション」を展示・紹介した。新開発の同製品は、病院内の各診療部門システムの診療データを1つのプラットフォームに集約・表示できる。「目的別患者リスト」機能搭載により、医師や医療スタッフが「入院予約患者」「特定の病名がついている患者」などの条件を設定すれば、目的の患者あるいは患者群が特定され、患者ごとの診療プロセスの進捗情報を検索・表示できる。ブース内プレゼンテーションでは、「Yahgeeを活用した診療業務支援ソリューション」や「地域医療連携サービス C@RNA Connect」についてのレクチャーも行われた。
●トレンドマイクロ
USBメモリの紛失による情報漏洩やウイルス感染などのトラブル対策に有用なオンプレミス型ファイル共有ソリューション「SafeSync for Enterprise」を展示。オンプレミス環境にデータ保管・ファイル共有のインフラを構築することで、院内に散在するファイルサーバ等を統合し、データ保管の利便性を向上。一方で、USBメモリの使用を必要最小限にとどめられるため、情報管理とセキュリティが向上する。
●リコージャパン
インタラクティブ ホワイトボード「D5500」を展示。医用画像などを映し出すだけでなく、手書きの書き込みができ、遠隔地とのコミュニケーションも可能で、カンファレンスに役立つ。また、バーコード対応のデジタルカメラ「G700SE」を展示。バーコードを読み取りカメラメモにその情報を取得して画像に書き込み、写真とバーコードを紐づけて管理できるため、患者取り違え等に役立てることができる。
●バルコ
独自のアイデアを随所に盛り込んだ、ベッドサイドで患者をケアするためのソリューションを出展。テレビ、ビデオ、インターネットなどのエンターテイメントの他、電子メールや患者の電子カルテ情報を表示することができるなど、さまざまな機能を持っており、同社では患者の入院中の快適性を向上させるとともに、医療スタッフの業務効率アップに貢献できるとしていた。
●エプソン販売
新製品モバイルプリンター「PX-S05W」を展示。バッテリーを含んでも約1.6kgで、楽に持ち歩きができ、スマートフォンやタブレットのデータをその場でプリント可能。バッテリーが本体内蔵のため、AC電源を持ち歩かなくても済む。バッテリー切れの場合でも市販のモバイルバッテリーからチャージでき、無線LAN環境がなくてもWi-Fi Direct機能を使い直接プリントできるため、在宅訪問医療・介護等に便利である。
●日立メディカルコンピュータ
診療所向け電子カルテ「Hi-SEED AS」を中心とした医療システムソリューションを、統合型データ管理システム等を販売するエクセル・クリエイツと共同で展示。日立メディカルコンピュータ独自の提案としては、「Hi-SEED AS」と医用画像管理システム「WeVIEW Z-Edition」、日立メディコ製のモダリティ(超音波、CT、MRIなど)のMWM連携を従来よりも低コストで提供するソリューションが挙げられる。