第34回医療情報学連合大会
11月6~8日、千葉県幕張市の幕張メッセにおいて、第34回医療情報学連合大会(第15回医療情報学会学術大会)が開催された。
大会長は千葉大学医学部附属病院企画情報部教授の高林克日己氏で、テーマは「医療情報学が医生物学を造る~医療情報学による医学の革新~」。
大会初日となる11月6日には開会式が催され、高林大会長はつぎのように挨拶した。「医療情報学連合大会を幕張で開催するのは3回目。今回は『医療情報学が医生物学を造る』という大きなタイトルをつけた。幕張で最初の第16回大会では、里村洋一先生が『電子カルテが医療を変える』というタイトルをつけたが、当時、電子カルテは夢のようなものであった。医療情報学も大きく変わり、今では電子カルテも、また地域医療連携も当たり前のものになった。医療情報学は、さらに今後、医療全体を動かす力を持つようになると確信している。このようなエポックメイキングな時に幕張で3回目を開けることは、大きな喜びである」
また、松村泰志氏(阪大)を座長に、高林氏による大会長講演「医療情報学が医生物学を造る-医療を編み、医生物学を革新するための情報学」が行われた。内容は「医療情報学の誕生と発展」「医生物学を革新する情報学」「超高齢社会と医療情報学」について。高林氏は、65歳以上が21%以上を占める我が国の超高齢社会をデータ分析し、人口減少時代における医療パラダイムシフトのあり方を予測。今後それらに対応する医療情報システムおよび情報倫理の必要性を強調した。
大会2日目には、藤田伸輔氏(千葉大)を座長として大会企画1「医療情報学が未来を可視化する」が行われた。高橋 泰氏(国際医療福祉大)が、日本の人口動態のあり方を説明しながら、日本の医療を良い方向に変革するためのスキームが必要と述べた。土井俊祐氏(千葉大)は地理情報システム(GIS)を駆使した千葉県における医療需給シミュレーションの結果を報告。藍原雅一氏(自治医大)は、自治医科大が取り組んでいる地域医療データバンク事業について紹介し、その有用性を力説した。さらに荒牧英治氏(京大)はTwitterやCrowed sourcing、Blogのビッグデータを活用した医療に対する取り組みについて紹介した。
3日目には大会企画3「在宅医療連携とはなにか」が行われた。大会長で座長の高林氏が在宅医療連携のための情報共有システムに関する説明を行った後、3名の講演が行われた。小笠原文雄氏(小笠原内科)は、在宅医療で遠隔診療を行い、看取りまで支えている実例を、平野 清氏(柏市医師会)は“点から面への戦略”である医師会と行政、多職種が連携した「柏モデル」を、遠矢純一郎氏(桜新町アーバンクリニック)は在宅医療でICT連携を実現する方策を紹介した。
共同企画12「日本地域医療福祉情報連携の実像」では、座長に中谷 純氏(東北大)を迎え、地域医療連携に関する議論が行われた。宮本正喜氏(兵庫医科大)は、「h-Anshinむこねっと」を例に地域医療福祉連携協議会の考え方を、小阪真二氏(島根県立中央病院)は、「しまね医療情報ネットワーク(まめネット)」のこれまでの取り組みと現状について、田中 博氏(東京医歯大)は、地域医療福祉連携の推移と第3世代地域医療ケアシステム、新たな政策や全国展開に向けた課題を講演した。中谷氏は、「学会の方向性はまだ出ていないが、継続して考え学会として発信できるようにしたい」とまとめた。
次回の第35回医療情報学連合大会(第16回日本医療情報学連合大会)は、山本隆一氏(東大)を大会長に、2015年11月1~4日、沖縄県宜野湾市の沖縄コンベンションセンター等で開催する予定である。