日本放射線腫瘍学会第27回学術大会

 日本放射線腫瘍学会(JASTRO)は、2014年12月11~13日の3日間、パシフィコ横浜(横浜市)で、第27回学術大会を開催した。
 会長は北里大学医学部 放射線科学「放射線腫瘍学」主任教授の早川和重氏で、テーマは「臨床腫瘍学に基づく放射線療法の標準化から個別最適化へ」。
 プログラムは、会長講演や特別講演のほか、教育講演やシンポジウム、ワークショップ等で構成。テーマに基づいて、各種臓器がんの特徴に基づいた放射線治療法の最適化に向けて今後の目指すべき方向性を示すプログラムが企画され、他学会との協同により、臨床腫瘍学的な視点から外科医や腫瘍内科医との討論の場を多く設定された。
 開会式直後の会長講演で、早川氏は放射線治療の進歩の歴史と現状、およびその課題について解説し、高齢化社会における放射線治療に対しての期待と、高精度放射線治療技術の開発とその普及について言及した。第27回大会のプログラムに込めたメッセージについては、「IGRTやIMRTなど、ラジオセラピーのテクノロジーはどんどん進歩しており、粒子線治療を含めいろいろな治療法が選択できるようになった。分子標的薬剤との併用や免疫療法など、患者さんの治癒力を高め、総合的ながん治療戦略を立てていくことが重要になる」と述べた。
 会長講演後のInternational Joint Symposiumでは、2013年に急逝したKian K.Ang氏(米テキサス大MDアンダーソンがんセンター)を偲んで「Professor Kian K. Ang: to be “Pioneer of Transnational Research in Radiation Oncology”」が行われた。山田章吾氏(杜の都産業保健会)と小牧律子氏(米国M.D.アンダーソンがんセンター)が座長を務め、James D.Cox氏(米国M.D.アンダーソンがんセンター)ら、国内外の関係者が同氏の功績を振り返った。
 また、特別功労賞を受賞した土器屋卓志氏(佐々木研究所 杏雲堂病院)と山下 孝氏(日本アイソトープ協会)がそれぞれ受賞講演を行った。
 土器屋氏は「放射線治療に関わる環境整備の今までとこれから」と題して講演。同氏がこれまで取り組んできた診療報酬点数の改善や法令の改正などの活動について、その経緯を語りながら放射線治療の現況について説明した。後進へのメッセージとして、「時代とともに、それぞれの職種に求められるものは高難易度のものになる。それに対応できる臨床現場のさらなる環境整備が求められる」と述べた。
 次いで山下氏は「手当てをする医者になる」と題して講演し、自身の放射線治療医としての活動を振り返りながら、「画像診断等の技術的進歩の一方、患者への聴診、触診が行われなくなってきている。まず患者に手を当てるところから医療は始まる。そして、治療後の観察なくして医療技術の向上はない」と語った。
 機器展示には56社の企業が参加。放射線治療装置の実機を展示し、一般の参加者にも最新機器の状況を体験できるツアー等の企画も行われるなど、活況を呈した。
 次回の日本放射線腫瘍学会第28回学術大会は、2015年11月19~21日、ベイシア文化ホール・前橋商工会議所会館(群馬県前橋市)にて、群馬大学大学院腫瘍放射線学教授/群馬大学重粒子線医学研究センター長の中野隆史氏を会長に開催する予定である。


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