第19回日本医療情報学会春季学術大会
第19回日本医療情報学会春季学術大会「シンポジウム 2015 in 仙台」が、6月11~13日の3日間、仙台市・仙台国際センターにおいて、が開催された。大会長は東北大学の中谷 純氏で、テーマは「羅針盤:医療情報学の位置~実学、研究、教育」。参加者は約1200名を数え、春季大会では最高となった。
開会式で中谷氏は、「医療情報の内容・技術・意義が大きく変わろうとする昨今、今回の大会では実学、研究、教育の3つの観点から、多岐にわたる医療情報学の位置づけについて考えていきたい」とコメント。開会式後に行われた会長講演では、自身が取り組んでいる東北メディカル・メガバンク機構などについての説明を交えながら、大会テーマに関する講演を行った。
さらに、続く特別講演では、田中 博氏(東北大/東京医歯大)が、「医療情報学と医療情報システムのこれから」と題して講演。田中氏はこの中で、「新たな医療・ケア体制構築に向けたパラダイム転換が日本医療の喫緊の課題」と述べ、医療情報システムの広域化、個別化、知能化の進展とその課題について論じた。
大会企画では、大会テーマに沿ったセッションが行われた。6月12日に行われた大会企画1では、昨年も実施されて好評だった「Year-In-Review」を開催。澤 智博氏(帝京大)を座長とし、仲野俊成氏(関西医大)が学術誌「医療情報学」から、今井 健氏(東大)が情報科学系学術誌から、座長の澤氏が医学・医療系学術誌から、選りすぐった論文について紹介した。
大会企画2「羅針盤(研究) 医療情報学的課題と医療情報学会としての役割」では、木村通男氏(浜松医大)と中谷氏を座長に中島直樹氏(九大)を加えた3者が、研究面から医療情報学のあり方と、それに対する学会の貢献について論じた。
6月13日に行われた大会企画3では、「羅針盤(教育) 世界の医療情報学教育の潮流」と題したセッションが行われ、欧米および日本における医療情報学の教育体制について論じた。小笠原克彦氏(北大)は、日本の医療情報教育学について解説。学会での医療情報技師の認定は進んでいるものの、大学教育の現場での医療情報学研究者の育成は十分でないと述べた。また、発表の最後に中国の医療情報学教育の現況についてもコメントした。次いで澤氏が、米国における医療情報学の専門医制度について説明。最後に美代賢吾氏(国立国際医療研究センター)が、ドイツのPLRI医療情報学研究所における客員研究員としての体験を踏まえながら、ドイツの医療情報学教育の現状について概説した。
大会企画4では、中安一幸氏(北大/厚労省)に代わって山本隆一氏(東大)と石川広己氏(日本医師会)が座長となり、「羅針盤(実学) 医療における共通IDと個人情報保護法制」と題してセッションが行われた。2015年10月から通称マイナンバーの通知が始まることから同セッションでは、マイナンバー法と相俟って行われる個人情報保護法の改正等が、医療分野にどのような影響を及ぼすかについて、芝 真理子氏(厚労省)、田尻泰典氏(日本薬剤師会)、冨山雅史氏(日本歯科医師会)、向井治紀氏(内閣官房)らの演者が会場の参加者を交えて議論を行った。
次回の第20回日本医療情報学会春季学術大会は、津本周作氏(島根大)を大会長に、2016年6月2~4日の3日間、島根県松江市・くにびきメッセを会場として開催する予定。