脳神経疾患研究所/民間医療機関で世界初のBNCT治験開始
脳神経疾患研究所(福島県郡山市)は、2月25日、同研究所附属南東北BNCT研究センター(同)で報道機関向けに会見を行い、民間医療機関における世界初のホウ素中性子捕捉療法(以下BNCT)の治験を実施することを発表した。
今回の治験は、ステラファーマ、住友重機械工業、京大原子炉実験所が2012年から行ってきたBNCTの「第Ⅰ相」試験に続く「第Ⅱ相」試験である。上記3者が進めてきた治験は、中性子を原子炉から取り出すのではなく照射室と同じ建屋内のサイクロトロン(加速器)を使って生成することに特徴を有し、一般病院での治療を可能にするものである。
なお、BNCTによるがん治療は、これまでも行われているが、実験用原子炉による研究的なものに限られている。今回の治験の目的は、ステラファーマのBNCT用ホウ素薬剤と住友重機械工業のBNCT治療システムの薬事承認にあり、2018年の承認申請を目指す。「第Ⅱ相」試験では、再発膠芽腫24症例を目標症例数として治療1年後の生存割合を評価する。
新築の南東北BNCT研究センターで行われた発表会において渡邉一夫理事長は、「東日本大震災から丸5年、ようやく治験開始にこぎつけた。難治性再発がんや浸潤がんに効果が見込めるBNCT治療を病院併設のセンターで実用化できれば、全世界の患者に朗報となるはずだ。先進的ながん治療研究の拠点として、そして福島のシンボルとして世界の研究者や患者が集まることにより周辺産業にも大きなインパクトとなるであろう」と抱負を述べた。
南東北BNCT研究センターの総工費は、約70億円(うち、国際的先端医療機器開発実証事業費補助金43億円)。既設の南東北陽子線治療センターに隣接し、建屋は2014年9月に完成した。