国立がん研究センター/世界初のリチウムターゲットの病院設置型BNCT
国立がん研究センターは、3月1日に記者会見を行い、がんのホウ素中性子捕捉療法(以下BNCT)の治験開始の時期等を発表するとともに、同センター中央病院(東京・中央区)が導入したBNCT装置を公開した。
同装置は、CICS(東京・江東区)が開発したリチウムターゲットシステムに、米国の日立製作所系AccSys Technology,Inc.の直線加速器を組み合わせた病院設置型BNCTシステムである。
なお、2014年の中央病院診療棟が完成時に加速器室、BNCT(照射)室はすでに設置済み。新しいBNCTシステムは、性能試験を経て2015年11月に原子力安全技術センターの施設検査に合格している。今後は、物理試験や生物試験を経て早ければ2016年度末に治験開始を目指すという。
リチウムターゲットを用いたBNCTシステムは、加速器で加速された陽子線をリチウムに衝突させて中性子を生成する仕組みで、人体に悪影響を与える可能性が大きい高速中性子の混在を少なくできることが最大の特長である。また、システムの小型化も可能であり、ターゲットを含む照射部も中吊り式となった。原子炉に比べ安全性を確保しやすいため病院導入に道をひらいた。なお、リチウムは融点が低いためにシステム開発が極めて困難であり、過去実用化した施設はなかったが、すべての種類のがんがホウ素化合物を集積するわけではないことから、今後、PETによるホウ素集積の正確な評価のもとに、ホウ素が集積する腫瘍に対して高選択的に強力ながん治療を進めていくという。
対象疾患は協議中だが、原理的には通常の放射線治療では治癒困難な脳の悪性腫瘍や皮膚悪性黒色腫、再発頭頸部がんなどが有望。導入コストは陽子線装置より安価という。