インターシステムズHealthcare Seminar 2018/まさに最先端の医療ITを活用した事例と可能性を説く
インターシステムズは10月11日、ANAインターコンチネンタル東京(東京・港区)で「InterSystems in Healthcare Seminar 2018」を開催した。
今年のテーマは「Bring Together The Information That Matters‐すべての大切な情報を利用可能に」。 同セミナーは2004年以来、医療および医療ITをけん引する識者が先進的な取り組み事例や最新技術の動向などを紹介しており、今年は15回目になる。
冒頭、同社日本統括責任者の植松裕史氏が挨拶し、上記テーマについて説明。「ビッグデータという言葉が日常的に使われるようになった今日、文字どおり大量のデータに囲まれた医療現場において、どのようにシステムを構築していけばよいのか、またどのようなシステムであるべきなのか、来場者の皆さんと一緒に考察していきたい」と述べた。
セミナーでは、まず田中良一氏(岩手医大)が「ミドルウェアは医療情報連携のHUBとなり得るか?-システム統合に向けた取り組みと展望」と題して講演した。田中氏は、岩手医大で矢巾新附属病院を2019年9月に開院すると同時に、同大付属の4病院、50以上のシステム統合を進めているプロジェクトについて紹介。同プロジェクトでは、サーバとストレージの仮想化を実施してミドルウェアを導入。相互接続性に冗長性を持たせてシステム間の接続を再設定することなく、機能の追加や制御を可能としている。
田中氏は、「今回のプロジェクトでは、ミドルウェアをHUBとし、電子カルテを頂点とせず部門システムと同格のシステムと位置づけ、さらに部門システムもミドルウェア経由に構成変更して統合環境に集約した」と、プロジェクトのコンセプトについて説明。さらに将来構想として、集約したデータを活用した診療情報連携チェックシステムの構築を進めていきたいと述べ、そのシステム構築には自然言語処理などの機能の応用が鍵となると述べた上で、「データは溜めるのが目的ではない。データは活用してはじめて生きる。データ交換基盤としてミドルウェアは重要な意味を持つ。個人的には、今後FHIRに期待している」と今後の展望を語った。
次にインターシステムズコーポレーション シニアクリニカルアドバイザーを務めるラッセル・リフトウィッチ氏(ヴァンダービルド大)が「相互運用性の実現への革新的なアプローチ:HL7 FHIRの可能性」と題して講演した。「FHIR」は、 HL7 が開発した次世代の医療 IT 標準仕様フレームワーク。リフトウィッチ氏は、米国において、一般的な病院1施設には80以上の部門システムが存在し、これら多数ある部門システムを連携させる仕組みとしてHL7 が作りだしたのがFHIRであると説明。そして、米国でFHIRを使用して、患者個人が病院情報システムから診療データをiPhoneにダウンロードできる仕組みを紹介するなど、同フレームワークによる新しい医療の可能性について説明した。
最後に、植松氏と同社のテクニカルコンサルティング部 上級コンサルタントである堀田 稔氏が「Bring Together The Information That Matters‐AI・IoT時代におけるすべての医療健康情報利用にあたっての課題とソリューションの考察」と題して講演した。植松氏は、9月30日から10月3日にかけて米国テキサス州サンアントニオで開催された「InterSystems Global Summit 2018」の概要について説明。「医療ITの進化は急激に訪れる」ことを強調した後、医療ITを取り巻く環境の変化について、政府が取り組んでいる「Society 5.0」の現状を紹介した。
堀田氏は、医療ITを進化させる上で課題となっている、個人・院内・地域に広がる患者情報を共有できる医療ITアーキテクチャーと、文書・テキストといった記述情報をデータに変換する技術として、特別な辞書なしで文書を解析する非構造データ活用の新技術である自然言語処理技術「InterSystems NLP」の仕組みについて説明。実際に同技術を用いたプレゼンを行った。