第22回日本医療情報学会春季学術大会/「医療情報学の再発見」をテーマに活発な議論を展開
第22回日本医療情報学会春季学術大会シンポジウム2018 in新潟が、6月21~23日の3日間、朱鷺メッセ(新潟コンベンションセンター、新潟市中央区)で開催された。大会長は赤澤宏平氏(新潟大)で、同大会のテーマは「医療情報学の再発見~研究の多様化の中で今なすべきことは?」。
21日は幹事会や理事会のほか、5つのチュートリアルが行われた。各チュートリアルは以下のとおり。
▽①HL7入門/②地域連携に活用できる新しいIHEプロファイル/③クラウド時代の到来!ASP・SaaS事業者が医療情報を取り扱う際の安全管理に関するガイドライン改定のポイント/④HELICS(医療情報標準化推進協議会)チュートリアル/⑤SS-MIX2大規模診療データベース、継続性を確保したベンダリプレースの実際
22日には開会式が行われ、その直後には、2017年の第37回医療情報学会における優秀演題に贈られた学術奨励賞に関する表彰式が行われた。表彰式では、学会理事長の大江和彦氏(東大)から受賞者に表彰状が贈られた。また、大江氏は今年度からは、この学術奨励賞に加えて新たに学術論文賞を創設し、2018年秋の第38回大会から表彰すると発表した。
続く大会長講演では、赤澤氏が自身の30年以上におよぶ経歴と研究成果を振り返って講演した。赤澤氏はまず医療情報学の定義について触れ、先輩研究者たちの言説を紹介しながら自身の考えとして「医療情報学とは、医学・医療の情報を医学・医療に有効に利用する方法を研究する科学である。研究なので、新規性、優れた実用性、顕著な社会的価値のいずれかを包含すべきである」と述べた。そして医療情報学会では、システムの機能や運用の事例、ネットワークやセキュリティに関する技術、集積された医療情報を用いたさまざまな分析・解析などが議論され、医療情報学の発展に大きく貢献してきたと、医療情報学の進展について説明。一方で、研究の質について疑問を呈せざるを得ないような内容のものも見られることがあると苦言を呈し、今後の医療情報学の研究の深化に必要なものとして、①研究の基礎となる理論や論文の理解、②研究デザインの詳細検討、③新規性、実用性、社会的価値の明確な提示が重要であると主張した。
特別講演1では、王 士傑氏(中国河北医科大第四病院名誉院長、中国河北省腫瘍学会理事長)が「中国河北省における食道がんに関する疫学・臨床情報の活用」と題して講演。食道がんの罹患率と死亡率が世界で最も高いといわれる中国、中でも同国の平均レベルの5倍、全世界の平均レベルの10倍の罹患率とされる河北省南部地域で、王氏が50年近く続けてきた検診などの罹患率低下への取り組みを紹介した。
大会企画セッション1では、毎回、多くの参加者を集める人気セッション、「Year-In-Review」が行われた。同セッションでは、Nature、Science、New England Journal of Medicine、JAMIA、ACI、MIM、EJBI、EMBS、BHI、JMIRなど、2017年の主要学術誌に掲載された注目すべき論文を紹介。黒田知宏氏(京大)は工学的視点から、澤 智博氏(帝京大)は医療情報学の観点から論文を紹介し、研究の背景から研究方法、結果、考察についての解説を行った。
また、約30の出展社による企業展示が行われたほか、大手3社による展示ルームも設けられ、多くの医療情報関係者が、展示された機器やシステムに関心を示していた。
次回の第23回日本医療情報学会春季学術大会は、熊本県熊本市の市民会館シアーズホーム夢ホール(熊本市民会館)で、宇宿功市郎氏(熊本大)を大会長に開催の予定である。