日立製作所他/スマート治療室のスタンダードモデルが臨床研究を開始
日本医療研究開発機構(AMED)は、治療の現場においてIoTを活用し各種医療機器・設備を接続・連携させることで、手術の進行や患者の状況などの情報を瞬時に時系列をそろえて整理統合することで、医師やスタッフ間で共有できる「スマート治療室」の開発を世界に先駆けて進めている。
同プロジェクトは、東京女子医科大学が統括して国内外の産業界で普及しているミドルウエアORiN(Open Resource interface for the Network)をコア技術とした汎用性の高い治療室用インターフェースOPeLiNKをデンソーが中心となって開発し、日立製作所のオープンMRI等の手術室内医療機器・設備を接続している。2016年に「ベーシックモデル」を広島大学病院、「ハイパーモデル(プロトタイプ )」を東京女子医科大学に設置し、機器のパッケージ化や新規アプリケーション等の開発を進めてきた。
今回、2019年度事業化を目指して「OPeLiNK」を備えたスタンダードモデル手術室が、信州大学病院の包括先進医療棟内に完成した。各種医療情報を“時系列の治療記録”として収集・提供(表示)し、手術室外の医師・技師等にも共有することにより、治療の効率性や安全性の向上が期待され、これらを検証するための脳腫瘍に関する臨床研究を開始する。スマート治療室の情報は、将来的にはビッグデータとしての解析も可能で、保守・管理の面でも機器操作ミスの防止や機器故障の未然検知、コスト管理(稼働時間の短縮)に大きなメリットをもたらす。
スタンダードモデルは、2019年度内の事業化を目指しておりスマート治療室の輸出等を通して日本の新たな産業基盤となることが期待される。パッケージとしての手術室の販売は日立製作所等が担当。また、今年度末に臨床研究可能なハイパーモデルを東京女子医科大学に設置し、ロボットベッド、新規精密誘導治療等の新しい技術を2020年度以降適宜リリースしていく。
同プロジェクトは、治療室の情報インフラとしてオープンな開発環境を提供する「OPeLiNK」を活用してスマート治療室の普及を促進していく。