日立製作所/尿検体を用いたがん検査に関する実証試験を開始
日立製作所は、尿検体を用いたがん検査の実用化に向けた体外診断分野では初となる実証試験を、本年4月から開始する。
この実証試験では、臨床情報(がんの有無)付き尿検体の回収から検体搬送時の温度のトレースや時間の管理、液体クロマトグラフ/質量分析計(LC/MS)によるバイオマーカーの定量分析、がん検査モデルの構築とそれに基づくがんのリスク判別、臨床情報と判別結果との妥当性検討など、一連の解析フローを半年間(繰り返し)実施する。
なお、今回の実証試験は、LC/MSによる定量分析についてはシミックファーマサイエンス社、解析データの評価については名古屋大学医学部附属病院の協力を得て実施する予定である。
同社は、尿中代謝物を用いたがん検査の研究を2015年から開始し、2016年6月には尿検体による健常者とがん患者の識別に成功した。しかし、実用化に向けては、健常者の代謝物と比較した際にわずかに存在量が増減するがんに関連するバイオマーカー候補を効率的に抽出する方法の確立が課題となっていた。 そこで今回、尿中代謝物からバイオマーカー候補を効率的に抽出できる新しいがん検査モデルを開発し、実証試験のスキームを構築した。
なお、がん検査モデルに基づくバイオマーカーの代謝物の定量解析において協力を得るシミックファーマサイエンス社は、薬物動態解析を中心に高度な精度管理が必要となるLC/MSにおける高い技術力を有し、国内有数の解析能力があるGLP(Good Laboratory Practice)に適合した分析ラボを有している。独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)のGLP適合性調査では適合(A評価)を受けており、今回の実証試験のデータ品質を担保することができる。
同社は、今回の実証試験(2018年4月~2018年9月を予定)を通して、種々のデータを取得して技術課題を洗い出し、尿中代謝物によるがん検査の実用化に向けた研究を加速する。