第37回医療情報学連合大会
第37回医療情報学連合大会(第18回医療情報学会学術大会)は、11月20~23日の4日間、グランキューブ大阪(大阪国際会議場、大阪市北区)において開催された。
大会長は、武田 裕氏(滋慶医療科学大学院大学学長)。テーマは、「医療情報学が紡ぐ『いのち・ヒト・夢』」。
同大会では、一般公募演題は口演185、ポスター99、HyperDEMO 10題を採択。また、特別講演、学会長講演、大会長講演に加え、学会企画2企画、共同企画12企画、大会企画8企画、産官学連携企画、シンポジウム11、ワークショップ7、チュートリアル16企画が実施された。
大会2日目の11月21日には開会式が催され、引き続き行われた大会長講演で武田氏は、「IoTやAIに代表される情報通信技術の進歩により、現在は第4次産業革命とも言うべき状況である」と称した。また、生命現象や疾病本態の解明などを「いのち」、健康寿命の延伸、医療の効率化と質を担保したヘルスケアシステムの構築の重要性を「ヒト」、そして個体の遺伝情報や生活環境情報を統合したプレシジョン医療などの進展を「夢」という各キーワードをもって論を展開し、医療情報学が今後どのような方向性で発展すべきかを訴えた。
学会長講演では大江和彦氏(東大)が、「あるべき診療記録ができる電子カルテシステム再考-新たなる挑戦の必要性」と題して講演。医療情報学会の1年間の活動を振り返った後、データの2次利用に関する現状と問題点について論じ、そのための診療情報の記録の在り方について持論を展開した。
3日目の22日には今大会に招待されたIMIA(国際医療情報学連携)のPresidentであるChristoph U. Lehmann氏(米国Vanderbilt大)が特別講演として、「Dreaming of a better Health Care System: Use of Secondary Data」と題した講演を行った。Lehmann氏は、医療情報学の進歩がもたらす将来像として、より安全な医療の提供、医療コストの削減、患者参加型システムの構築と患者体験の改善による医療の質と患者満足度の向上をあげ、現在米国で取り組んでいる研究やシステム開発について論じた。
大会企画5「個人情報保護法改正への具体的な対応方法」では山本隆一氏(東大)が、2017年改正・施行された改正個人情報保護法の概要を説明。現状で十分対応できている場合、医療・介護の現場での運用にほぼ変更は必要ないとしながら学術研究など診療データの2次利用については患者の同意を得るなどの対応を適切に行う必要があると述べ、遺伝情報の取り扱いなどにも不明瞭な部分があると同法の問題点について解説した。大原 信氏(筑波大)は、臨床医学研究での改正個人情報保護法への対応をテーマに講演し、主な改訂内容である1.用語の定義の見直し、2.インフォームド・コンセント等の手続きの見直し、3.匿名加工情報および非識別孤高情報の取り扱いに関する規定の追加について説明し、臨床研究を実施する上での注意点・対応について概説した。
また、「電子カルテExpo2017」セッションでは、大会3日目と4日目の2日間にわたり電子カルテデータの利活用、電子カルテの医療安全への活用、病棟を支援するシステム(指示システム)、診療情報の記載と閲覧(情報収集)の4つの領域に分けて病院情報システムの具体的な利活用に関する講演が行われた。
学会には、3000人以上の参加者が来場。73の企業・団体による展示ブースやホスピタリティルームには、システム導入の相談等に訪れる来場者の姿が数多く見られた。
次回の第38回医療情報学連合大会(第19回日本医療情報学会学術大会)は、宇都由美子氏(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科)を大会長として、2018年11月22~25日に福岡市の福岡国際会議場と福岡サンパレスで開催する予定である。