インターシステムズジャパン/Healthcare Seminar2017
インターシステムズジャパンは、6月8日に東京コンファレンスセンター・品川(港区)で「InterSystems in Healthcare Seminar 2017」を開催した。今年のテーマは、「医療現場を支えるIT~医療連携と情報共有」。
同社日本統括責任者の植松裕史氏が挨拶に立ち、上記テーマについて説明。「医療における情報共有では、データを分析して情報を得ること、データを活用して医療行為の質を上げること、この2つの循環が必要だ。医療連携には、このような情報共有の仕組みが必須であり、医療現場を支えるITは、情報共有の仕組み作りにおいて、人と組織の連携をサポートする」と述べた。
セミナーでは、盛一享徳氏(国立成育医療研究センター)が、「疾病情報共有の必要性とその意味~小児医療の立場から」を演題に講演。「乳幼児死亡率は、医療の進歩で劇的に減少したが、低出生体重児や先天性心疾患、小児がんの患者など、疾病を抱えて生きる子供たちの増加が問題となっている。そのためには、保護者を含む医療、福祉、学校等関係者間の情報共有が必要だ」と述べ、盛一氏が携わっている神奈川県立こども医療センターでのNICU電子退院手帳の実証実験の内容を紹介。同実験では、インターシステムズ社のEnsemble(アンサンブル)とCache(キャシエ)を活用して、電子カルテから必要な情報を抜き出し、患者に提供しているという。
鳥飼幸太氏(群馬大学医学部附属病院)は、「『スマートフォン+オンデマンド』運用が導く安全・迅速な医療現場への変容」を演題に講演。「現代は、人が自身で知ることができる情報を大幅に上回る情報量が流通している。医療のデータは発生したら消すことができない情報だが、そうした情報過多は人の意思決定を鈍らせる。私は、これからのITは、時間を生み出すために利用することを提案したい」と述べ、取り組みの1つとして、鳥飼氏がコンセプトを設計し、群馬大が開発したパニック値アラート通知システムの概要を紹介。インターシステムズ社のEnsembleを利用することによって、リアルタイムにパニック値判定を実施、システムに依存することのない拡張性を有するなどのメリットを説明した。
堀田 稔氏(インターシステムズジャパン社テクニカルコンサルティング部 上級コンサルタント)は、「自然言語解析ボトムアップアプローチ InterSystems iKnowのご紹介」をテーマに講演を行った。堀田氏は、iKnow開発の経緯を述べ、自然言語処理の難解さを説明。「構造解析アプローチは難しく、従来から行われてきた“単語”に区切ることは必須なのか?という点から出発し、意味の境界を特定する仕組みを考えた」と述べ、iKnowの特徴である、分の構造そのものから意味を持つ文字列のつながり“エンティティ”の描出について説明し、iKnowのデモを実演した。
特別講演として宇宿功市郎氏(熊本大)が、「医療現場での非構造化データ活用の課題と熊本大学病院での取り組み」を演題に講演した。宇宿氏は、医療分野での情報電子化の歴史を振り返りながら、従来のシステムが情報の一覧性や検索機能が弱かったという事実を指摘。そして、年々、院内で作成しなければならない書類が膨大化することで、医療現場でのペーパーワークの負担が大きくなりすぎ、そのための診療を支援するITの仕組みを欲する実態となったことを説明した。
また、熊本県で構築中の“くまもとメディカルネットワーク”を紹介した後、「医療連携はできるようになったが、日々の医療における観察項目の増大、作成書類の増加が医療関係者をPCに長時間張りつけにしてしまう結果を招いている。もっとintelligentなコンピュータの仕組み、医療関係者をAssistしてくれる仕組みが欲しい」と述べ、熊本大学で開発した、インターシステムズ社のiKnowを活用した退院サマリ等書類作成支援の概要を紹介した。
講演会には、多くの医療およびITの関係者が来場し、講演者の主張に耳を傾け質疑応答も行われた。