日立製作所/乳がん検診のための“新超音波計測技術”を発表
日立製作所は、5月24日に同社本社(東京・千代田区)にて、乳がん検診技術の研究開発説明会を開催した。
現在の乳がん検診の課題を解決できるという“新超音波計測技術”は、360度の方向から超音波を照射・取得するもので、リング状の超音波デバイスを用いて自動スキャンを行うため、検査者によらない検査が可能となる。受診者は、うつぶせになり水を満たした検査容器に乳房を入れるのみでよく、痛みを伴わず、安全に検査ができる。また、取得した音波の速度などを元に、腫瘍のさまざまな特性(硬さ、粘性、表面の粗さ)を計測可能で、乳腺内の微小石灰化も可視化できるため、検診の精度向上が期待できる。
同社研究開発グループ基礎研究センタ長の山田真治氏は、同社の計測技術への取り組みと、今回の超音波自動計測・解析技術の開発の経緯を説明した。
同センタの川畑健一氏は、新技術の詳細を解説し、次のように述べた。
「日本では、比較的若い40代後半に乳がん罹患のピークがくるが、この世代は高濃度乳房であることが多く、マンモグラフィでは発見できないこともある。新技術の『マルチモード超音波CT』は、従来のマンモグラフィと超音波による検査の課題を解決できるものになるだろう。開発技術の1つめは『乳房と超音波デバイスの分離構造』で、超音波デバイスと乳房が離れても正常に検査可能な計測技術である。2つめは『側方反射波を解析する技術』で、360度の方向から超音波を照射・取得し、腫瘍表面の粗さなどの特性を計測する技術である。これらにより、より多くの情報が提供可能になって、検診の精度向上に貢献できる」。
同新技術は、2017年4月より北海道大学病院との共同研究を開始する。手術で摘出された人間の腫瘍部分を用いて動物臨床での効果を確認し、パラメータを最適化。その後実用化に向け、実際の患者による計測で臨床的有用性を確認する予定である。