日立製作所・北海道大学/動体追跡粒子線がん治療装置で全国発明表彰「恩賜発明賞」を受賞
日立製作所(以下、日立)と国立大学法人北海道大学 (以下、北大)は、動体追跡粒子線がん治療装置(特許第05896211号)に関する発明で、平成29年度全国発明表彰で最も優れた発明に贈られる「恩賜発明賞」を受賞した。
粒子線がん治療は、放射線によるがん治療法の一つ。水素の原子核である陽子や炭素イオンなどの粒子を加速器で高速に加速し、生成した粒子線を腫瘍に集中して照射することでがんを治療する。治療に伴う痛みがほとんどなく他の放射線治療に比べて副作用が少ないため、治療と社会生活の両立が可能で、生活の質(QOL:Quality of Life)を維持しつつ、がんを治療できる最先端の治療法として国内外の医療機関で導入が拡大している。
従来、頭部の腫瘍のように移動しない部位では、腫瘍に集中して粒子線を照射するピンポイントの治療が可能であったが、肺や肝臓のような体幹部の腫瘍は呼吸などで移動するため、腫瘍位置をリアルタイムで捉えて正確に粒子線を照射する技術が求められていた。
こうした背景のもと日立と北大は、内閣府/日本学術振興会・最先端研究開発支援プログラムの支援を受け、日立が持つスポットスキャニング照射技術と、北大が持つ動体追跡照射技術の両方を世界で初めて搭載したシステムを共同開発した。
両者の持つ技術を融合した本発明を活用することで、移動する腫瘍に対するより正確な照射と、その照射をより短時間に行い患者への負担を軽減することを両立させることが可能となった。北大病院では、2014年から同技術を適用した陽子線によるがん治療を行っている。