JRC2017
放射線医療関連の国内最大イベント「JRC2017」が、4月13~16日の4日間、パシフィコ横浜で開催された。主催は、一般社団法人日本ラジオロジー協会。同イベントは、第76回日本医学放射線学会総会(JRS)、第73回日本放射線技術学会学術大会(JSRT)、第113回日本医学物理学会学術大会(JSMP)、2017国際医用画像総合展(ITEM2017)の合同イベントである。日本医学放射線学会総会の会長は、角谷眞澄氏(信州大)、日本放射線技術学会学術大会の大会長は、宮地利明氏(金沢大)、日本医学物理学会学術大会の大会長は、野田耕司氏(量研機構放医研)が務めた。メインテーマは、「極めよう放射線医学、広げよう放射線診療(To the Radiology,To the horizon of Radiology)」。
それぞれの学会で多くの講演・セミナーなどが実施され、3学会合同のシンポジウムなども多数行われた。学会の総参加登録者数は1万2529人、「国際医用画像総合展(ITEM2017)」来場者数は2万2810人。
来年の「JRC2018」は、メインテーマを「Innovative science and humanism in Radiorogy 夢のような創造科学と人にやさしい放射線医学」とし、第77回日本医学放射線学会総会の会長は、今井 裕氏(東海大)、第74回日本放射線技術学会学術大会の大会長は、錦 成郎氏(天理よろづ相談所病院)、第114回日本医学物理学会学術大会の大会長は、小口 宏氏(名古屋大)。会期は、2018年4月12日(木)~15日(日)、パシフィコ横浜で開催予定である。
<冒頭挨拶・基調講演>
日本ラジオロジー協会代表理事の大友 邦氏は、合同開会式で、まず「JRC2017」の開催について、放射線医学および放射線診療に関わってきた1人としての喜びを語った後、さらに放射線医学の頂点を“極める”、放射線診療のすそ野を“広げる”ことの重要性を示し、挨拶とした。
基調講演として、日本医学放射線学会総会会長の角谷眞澄氏は、肝癌に対するMRI診断や造影剤を用いた肝病変の血流動態解析について解説した。これらは信州大が研究テーマとして取り組んできたもの。また、肝細胞癌の高速撮像および造影CTによるバーチャルダイナミックCT等について紹介した。
<合同開会式&演奏会>
昨年に引き続き、アンサンブルデュナミスによる弦楽アンサンブルにより開幕。主催者代表として、大友 邦・日本ラジオロジー協会代表理事、角谷眞澄・日本医学放射線学会総会会長、宮地利明・日本放射線技術学会学術大会大会長、野田耕司・日本医学物理学会学術大会大会長、ITEMを運営する日本画像医療システム工業会の小松研一会長が紹介され、4団体会長の挨拶に続いて基調講演が行われた。
また、合同特別講演として中田英寿氏(元サッカー日本代表)のトークイベント、平野俊夫氏(量研機構)による講演「量子医学・医療の将来展望」が行われた。
<合同シンポジウム>
3学会が合同で開催する合同シンポジウムは、(1)「放射線医学・診療を極め、広げるために」、(2)「放射線医療に関する国際規格・プロトコール」、(3)「小児画像診断における被ばくの現状と課題」の3題が行われた。合同シンポジウム(1)では、5名の演者が登壇。金澤 右氏(岡山大)が「インターベンショナルラジオロジーを広げる、極める」について講演し、その中で「IVRを広めるには、その有用性を企業、病院、政府に認めてもらうことが大切」と指摘。「共同による教育を考える-医療被ばく-」を演題に講演した奥田保男氏(量研機構放医研)は、被ばく問題について世界に視野を広げ、IAEAのスマートカード/スマートラドトラック・プロジェクトを中心に、日本の産学官や日本画像医療システム工業会(JIRA)を交えてどのような展開ができるかについて語った。
<合同表彰式&CyPos>
CyPos展示に関するViewing Areaには、多くの参加者が会場を訪れ発表演題の発表内容に見入っていた。CyPos賞では、第76回日本医学放射線学会総会のPlatinum Medalに渡部笑麗氏(愛媛大)と片野厚人氏(東大)、第73回日本放射線技術学会総会学術大会のPresident Awardに後藤光範氏(宮城県立がんセンター)、第113回日本医学物理学会学術大会の大会長賞には、宮川 真氏(駒澤大)ら8名がそれぞれ受賞し、最終日に合同表彰式が行われた。
<日本放射線技術学会>
4月15日に、実行委員会企画シンポジウム「Challenge of AI in Radiology and Radiological Technology:IBM Watson and Deep Learning/AIの放射線医学・技術学への挑戦 ―IBMワトソンとディープラーニング」を開催。欧米の学会でも議論が続けられているAI技術について、座長の藤田広志氏(岐阜大)によるイントロダクションの後、庄野 逸氏(電気通信大)がAIとディープラーニングの現状と将来展望を説明。Tanveer Syeda‐Mahmood氏(IBM)が人工知能IBMワトソンを紹介した。その後、ディープラーニングの研究事例を寺本篤司氏(藤田保健衛生大)と周 向栄氏(岐阜大)が報告した。
<日本医学物理学会>
4月16日に、日本生体医工学会との交流セッションを開催。杉町 勝氏(国立循環器病研究センター)と椎名 毅氏(京大)による講演が行われた。椎名氏は、「次世代乳癌イメージング技術:光超音波マンモグラフィの開発」と題して講演。自身が開発中の最先端レーザと超音波を融合する光超音波手法による血管と血液状態をイメージングする技術について説明した。
<シンポジウム>
日本医学放射線学会は、9本のシンポジウムが行われた。シンポジウム1「新たな疾患総整理」は、澄川裕充氏(大阪府立成人病センター)による「間質性肺炎の新しい疾患概念」、増本智彦氏(筑波大)による「放射線科医が知っておくべきWHO2016脳腫瘍分類の改訂内容」、有薗茂樹氏(京都大学病院)による「胆管・膵管の腫瘍性病変:最近の知見と新たな疾患概念」、青木隆敏氏(産業医科大)による「骨軟部」の4題の講演が行われ、最近の疾患概念や診断基準の変化などの最新情報がレクチャーされた。
<特別企画>
日本医学放射線学会総会の特別企画は、3題が設けられた。最終日の4月16日に開催された特別企画3「画像診断ガイドライン2016:改訂ポイントと今後の方向性」は、村山貞之氏(琉球大)を司会に迎えて3年ぶりに改訂された「画像診断ガイドライン2016」の内容について解説を行った。はじめに岡田真広氏(琉球大)が、ガイドラインの概要と改訂のポイントについて、今回の改訂では小児・核医学領域での内容を充実させ、新たに追加された画像診断のエビデンスに基づく一部のCQの変更を行ったこと、及び外部評価を行った学会/研究会の数が20から25団体に増えたことなどを紹介。その後、婦人科領域は田中優美子氏(がん研究会有明病院)、消化器領域は吉満研吾氏(福岡大)、小児領域は相田典子氏(神奈川県立こども医療センター)、核医学領域は立石宇貴秀氏(東京医科歯科大)が、それぞれ改訂のポイントを説明。最後に、片岡正子氏(京大)が、診療ガイドラインの今後の方向性についてコメントした。
<イメージ・インタープリテーション・セッション>
学会参加者からの人気が高いイメージ・インタープリテーション・セッションは、大倉隆介氏(大阪府済生会中津病院)、木口貴雄氏(一宮西病院)、櫻井悠介氏(名大)、水木健一氏(聖隷浜松病院)の4氏が、各領域より出題された6問に答えるスタイルで行われた。回答者82名のうち、壇上の大倉氏、木口氏のほか、下野太郎氏(大阪市立大)が、6問全て正解して成績優秀者に選出された。
<ランチョンセミナー>
企業との共催によるランチョンセミナーは、27題が行われた。最終日の4月16日に行われた東芝メディカルシステムズとの共催によるランチョンセミナー「聖マリアンナ医科大学グループ病院を統合する次世代画像情報システムの実現」では、小林泰之氏(聖マリアンナ医科大)が講演。小誌2017年3月号でも紹介した聖マリアンナ医科大学グループが東芝と共同開発を進めながら構築中の4病院1クリニックをネットワークで結ぶ次世代型PACSのコンセプトと概要を説明した。富士フイルムメディカルは、同社類似症例検索システム「SYNAPSE Case Match」を題材として、黒崎敦子氏(複十字病院)が、「びまん性肺疾患(非腫瘍性肺疾患)への拡大」、南部敦史氏(帝京大附属溝口病院)が、「肺病変類似症例検索システムの実臨床での初期使用経験」をテーマにそれぞれ講演した。
<国際医用画像総合展>
我が国最大の医用画像に関する展示会「2017国際医用画像総合展」(ITEM2017)は、4月14日~16日の3日間、各学術大会と同時にパシフィコ横浜展示Aホール(一部)と、B、C、Dホールで開催され、画像診断装置・機器などを中心に161社が出展した。