NEC/医療セミナー2017
NECの医療セミナーが、2月24日に東京会場(東京・港区、NEC本社ビル)、3月3日に大阪会場(大阪市、ホテルニューオータニ大阪)で開催された。セミナーは、両会場ともに2つの講演と展示会で構成された。
東京会場では、講演1として美代賢吾氏(国立国際医療研究センター)が「雲の上の未来:A Future byond the cloud」と題して講演。同センターで導入・稼働しているクラウドサービスや、診療録直結型全国糖尿病データベース事業(J‐DREAMS)の概要、SDN(Software Defind Networking)と連携したセキュリティシステムについて概説した。
クラウドサービスの活用では、Office365+MFA+RMSを導入し、電子カルテ系ネットワークへのアクセスを可能にしたことでの電子的連絡手段の一元化や、外部からのメール利用を可能にしたことによる情報伝達の効率化など、組織の活性化を実現したと述べた。
「J‐DREAMS」事業については、現在32医療機関が参加し、2万6000人の糖尿病症例が登録されるなどの成果を上げていると報告した。
SDNと連携したセキュリティシステムを構築することで、サイバー攻撃からの防御力を高め、システム関係者の業務負担の軽減化を合わせて実現していると述べた。
講演の最後に美代氏は、「医療クラウドと医療ビッグデータの進展により、セキュリティに関して組織内・組織外の概念の転換が求められるだろう。一方、医療ビッグデータとAI技術が進展しても、コミュニケーションインターフェイスとしての人の役割は重要であり続ける」と今後の医療ICTの進展に関する展望を語った。
講演2では、松村泰志氏(大阪大学)が、「医療の質向上に資する電子カルテに向けて」をテーマに、主に構造化データの活用について講演した。
同氏は、電子カルテに期待される要件の中で「記録の編集・二次利用」と「医療従事者の意思決定支援」を挙げ、それらを支援するツールとして「構造化データ登録(テンプレート入力)が考えられる」と指摘。同大学で稼働・構築中のシステム概要を説明した。同システムはテンプレートでの複雑な内容の記述や読みやすい記録化を目標とし、患者基本情報、検体検査結果、スキャン・病理データなどに対応できるように設計。成果として、記録誘導の仕組み作りと自動サマリーの作成、患者プロファイルからの看護診断サポート、臨床研究やレジストリへの直接データ送付を視野に入れている。また、記録誘導の仕組みとして、既に稼働中の慢性疾患における高血圧の時系列管理を例に挙げて説明。その後、開発中のシステムについて、現況を述べた。
なお、同セミナー会場では、NECの医療ICT技術に関する展示も行われた。
同社の電子カルテ「MegaOakHR」に関する展示では、新バージョンに搭載された重症病棟機能オプションなどを展示。テルモ社製のスマートポンプと接続して、薬剤投与量等を電子カルテ上に反映して医療安全対策ソリューション「ME‐CONCENTスマートポンプ連携システム」などが紹介された。また、地域医療連携ネットワークサービス「ID‐Link」に関しては、料金体系を変更し、より長期継続性を見通しやすい料金プランを紹介するなどしていた。
その他、今年1月に発売した「歩行姿勢測定システム」を展示。同システムは、3Dセンサーに向かって6m歩くだけで、歩行速度やふらつきなど6項目を網羅的に検知し、年齢と性別に応じた基準で点数化。平均値との比較により改善ポイントを把握することで、健康維持・増進を支援する。接骨院や整骨院、リハビリテーションを行う病院・施設、介護施設などを販売対象としている。
東京のセミナーには、約240名が参加し、盛況を呈していた。