第36回医療情報学連合大会
第36回医療情報学連合大会(第17回医療情報学会学術大会)は、11月21~24日の4日間、パシフィコ横浜において開催された。大会長は、折井孝男氏(河北総合病院・NTT東日本関東病院・東京医療保健大学大学院)で、テーマは「『集める』『読む』『伝える』から『つなぐ』へ!~『たぶん』『おそらく』の確証」。同大会では、開会前日の11月21日に行われたチュートリアル企画をはじめ、大会長講演や学会長講演、特別講演5題、教育講演2題、シンポジウム8題、ワークショップ15題、一般演題305題、他に企業展示等が行われた。
大会初日となる11月21日には開会式が催され、引き続き行われた大会長講演で折井大会長は「医療の提供体制が“治す医療”から“治し支える医療”へ、その中で薬剤師の領分は、調剤行為を含む医薬品を提供する“対物業務”から、患者の様々な病態における医薬品の使用を包括的に管理し、薬物療法の安全性・有効性を保証する専門職にシフトしている」と述べ、院内の医師や看護師だけでなく、院外の保険薬局薬剤師らとの連携が重要になると語った。
また、シンポジウム2「『医療機関における安心・安全に電波を利用するための手引き』と無線通信導入」では、花田英輔氏(佐賀大)と小田直之氏(神奈川県立病院機構)を座長に、2016年4月に発表された「医療機関における安心・安全に電波を利用するための手引き」に関して、さまざまな角度から登壇したシンポジストが意見を開陳した。坂中靖志氏(総務省)は、同手引きの作成の経緯と概要を紹介。花田氏は、病院における電波利用に関するアンケート調査の結果を報告しながら、現在の問題点を指摘し、院内における電波管理体制整備を求めた。村木能也氏(東海大)は、現在多くの病院で問題となっている医用テレメータの受信障害対策について説明した。小田氏は、同じく院内で起こっている無線LANに関する諸問題とその対策について解説。加納 隆氏(埼玉医大)は、医療機関における携帯電話等の使用に関する指針について説明し、医療機関における電波の管理体制の充実化が必要と述べた。
大会2日目には、医療情報学会長の大江和彦氏(東大)が「医療情報学の将来に向けた学会の役割」をテーマに講演。大江氏は、これからの医療における医療情報学の視点として、①患者視点の健康医療情報を国民に直接還元、②国民の健康増進と健康危機回避、③患者個人特性と病型に適合した精密医療(Precision Medicine)の実現、④社会保障システム改革と持続可能な社会システム構築に資する知見を提供、⑤超少子高齢社会を乗り越えるインフラの5つが必要と述べた。さらに、今後の学会活動方針として、従来の方針に加え、新たに①先端医療・精密医療を生み出す革新的医療情報システムの視点と②飛躍しつつあるAIやIoT、NLPなど最先端のICT技術を発展させて活用する視点の2つを追加したいと説明した。
シンポジウム6「組織横断的な臨床分析を可能にするDWHとは」では、医療ITの普及で医療機関内での構築が進んでいるデータウエアハウス(DWH)について、その活用が十分進んでいないという現状を踏まえて、紀ノ定保臣氏(岐阜大)らが設立した、DWHの標準化と実装化を目指すSDM(Semantic Data Model)コンソーシアムの活動や事例などを報告した。まず、座長の紀ノ定氏が同コンソーシアムの概要を説明。近藤博史氏(鳥取大)、鈴木英夫氏(MoDeL)、木村映善氏(愛媛大)氏、高月常光氏(トゥモロー・ネット)、久島昌弘氏(沖縄県立中部病院)らが事例等を講演した。
次回の第37回医療情報学連合大会(第18回日本医療情報学連合大会)は、武田 裕氏(滋慶医療科学大学院大)を大会長として、2017年11月20~23日に大阪市の大阪国際会議場で開催する予定。