第52回日本医学放射線学会秋季臨床大会

 日本医学放射線学会の第52回秋季臨床大会が、9月16~18日の3日間、京王プラザホテル(東京・新宿区)で開催された。大会長は中島康雄氏(聖マリ医大)で、大会テーマは「Enjoy Radiology,Enjoy your life」。同テーマに決めた理由について中島氏は開会式で、「私は放射線科医としてのパフォーマンスを上げるためには、教える側も教えられる側も楽しく仕事をしなければならないと信じているから」と述べた。以下にシンポジウムや特別企画等の内容を中心に紹介する。
 大会初日の16日にはシンポジウム1「ICTによる画像診断の変化と将来」が開催された。大串雅俊氏(米沢市立病院)、煎本正博氏(イリモトメディカル)、三原直樹氏(阪大)、川光秀昭氏(神戸大)、松本純一氏(聖マリ医大)、高尾洋之氏(慈恵医大)の各氏が、自宅読影、遠隔画像診断の質、VNA、クラウド保存、救急の遠隔画像診断、スマホによる診断補助システム等ICTを用いた画像診断について、現状と問題点、将来の可能性等を語った。
 17日には、特別企画1「技術革新とIVR~近未来のIVR支援マシーン」が行われ、3名の演者が登壇。高木治行氏(兵庫医大)は「CTガイド下穿刺支援ロボット“MAXIO”の使用経験」について講演。同装置は、インド企業が開発したロボットで、同氏は「穿刺精度は手技とほぼ変わらないが、被ばく低減と術者間の手技のバラつき是正の面では有効」と指摘した。続いて平木隆夫氏(岡山大)が「CT透視下針穿刺用ロボット(Zerobot)の開発:第三世代ロボットの紹介」を演題に講演し、今年3月に完成した最新型の臨床研究の現況と将来展望を報告した。最後に黒木一典氏(杏林大)が「磁場を用いた新しい位置情報装置(MediGuide)の人体血管モデルでの検討」をテーマに講演し、同装置の躯幹部への適用性について「使用可能な精度を持つと考える」と述べた。
 大会最終日の18日には、今大会で最も異彩を放った特別企画「放射線科医と写真」が開催された。放射線科医に写真愛好者が多いことは広く知られているが、演者である田岡俊昭氏(名大)、三木幸雄氏(大阪市立大)、片田和広氏(藤田保衛大)は、3人で合同写真展を複数回行ったほどの愛好家。放射線科医ならではの視点も含めての写真への取り組みに中島大会長をはじめ、多くの聴衆が耳を傾けた。また、同日に開催されたJCRアワー「放射線科医の認知度をどうやって上げる?」では、放射線科医の重鎮6名が「放射線科医の認知度を上げる取り組み」や「放射線医学の医療政策」について語った。福田国彦氏(慈恵医大)は、「放射線医学を世に広めるために、市民公開講座を開くべき。また医学部を目指す中高生へのアウトリーチ教育も必要だ」と述べた。小野澤志郎氏(日本医大)は、IVRの認知度を高める方策として全国80の医系大学へのアンケート結果をもとにIVR専門医の充実を求めた。大西 洋氏(山梨大)は、政府・学会・大学・市中病院それぞれのレベルでの「放射線科認知度向上」を具体的に示した。吉田哲雄氏(神奈川県立がんセンター)は、同センターで行っている中学生を対象に、IVR手技と解説・指導を行ったイベント「君もレントゲン博士!」の内容を紹介した。水沼仁孝氏(那須赤十字病院)は、外保連手術副委員長の立場から、外保連が放射線医学の医療政策を反映させるための具体例を示した。井田正博氏(荏原病院)は、これからの放射線診療体制や診療報酬について行政への働きかけをする団体としての放射線科医師連盟の役割と必要性について言及した。
 次回の第53回日本医学放射線学会秋季臨床大会は、愛媛県松山市のひめぎんホールにて、愛媛大の望月輝一氏を会長に開催の予定である。


その他の記事

GEヘルスケア・ジャパン/セラノスティクス医療啓発と普及目指しセミナー開催(24.10.21)

GEヘルスケア・ジャパンは9月20日、Web上でメディアセミナー「がん治療の新たな展望-セラノスティクスの新たな展望と課題」を開催した。 セラノスティクス(Theranostics)とは、治療(Therapy)と診断(Di-agnostics)を組み合わせた医療技術であり、放射線を使った薬剤で病気を診断しながら、別の放射線を用いた薬を…

日本放射線腫瘍学会/第37回学術大会の概要と肺がんへの最先端治療技術を紹介(24.1010)

日本放射線腫瘍学会(JASTRO)は9月19日、トラストシティ カンファレンス京橋(東京・中央区)で、学術大会前の恒例のプレスカンファレンスを開催した。今回は「肺がんへの放射線治療」をテーマに、同学会の主要メンバーが講演を行った。 初めに、同学会理事長の宇野 隆氏(千葉大)が挨拶し、放射線治療の現状と学会…

がん対策推進企業アクション/セミナーリポート(24.9.21)

がん対策推進企業アクション(厚生労働省委託事業)は、8月27日、神田明神文化交流館(東京・千代田区)にて、恒例のメディア向けセミナーを開催(オンライン含)。「がん教育の意味~ヘルスリテラシー最低国からの脱出に向け」を演題に、同事業のアドバイザリーボードメンバーの中川恵一氏(東大)が講演した。 同ア…

国際モダンホスピタルショウ2024レポート(24.8.15)

医療・介護・福祉関連製品を展示した国内最大のイベント「国際モダンホスピタルショウ2024(主催:一般社団法人日本病院会/一般社団法人日本経営協会)」が、7月10日から12日までの3日間、東京・有明のビッグサイトで開催された。今回のテーマは「健康・医療・福祉の新たなステージ ~DX推進による、確かな進化へ~」。…

JRC/「JRC2024」国際CTシンポジウム等も開催  ITEM2024は延べ来場者数約1割増で活況を呈す(24.5.1)

 放射線医療関連の国内最大イベント「JRC2024」が、4月11~14日の4日間、例年どおりパシフィコ横浜で開催された。主催は、一般社団法人日本ラジオロジー協会で、第83回日本医学放射線学会(JRS)総会(会長:陣崎雅弘氏=慶大)、第80回日本放射線技術学会(JSRT)総会学術大会(大会長:根岸 徹氏=東京都立大)、第127…

第35回関東医療情報技師会/診療情報標準化の重要性を各分野から改めて訴える(24.4.22)

 関東医療情報技師会は、4月6日、東京医科大学病院9階 臨床講堂(東京・新宿区)において、第35回関東医療情報技師会を開催した。「関東医療情報技師会」は、年に4回程度、勉強会を開催しており、その35回目となる。今回は医療情報技師だけでなく、ベンダや医療関係者にも広く門戸を開放した勉強会であり、約150名が参加…

島津製作所/恒例のレントゲン祭─リアル開催(2024.2.20)

 島津製作所は、毎年ヴィルヘルム・レントゲン博士の命日に博士の功績を称え遺徳を偲ぶ「レントゲン祭」と記念講演会を、2月9日、本社(京都・中京区)にて開催した。今回は101回目で、4年振りのリアル開催となる。  冒頭、医用機器事業部長の園木清人氏は式辞を述べた後、同社の最新トピックスを紹介。「高齢化、QOL向…

保健医療福祉情報システム工業会(JAHIS)/恒例の新春講演会&賀詞交換会を4年振りに対面で開催(2024.2.20)

 保健医療福祉情報システム工業会(JAHIS)は、1月23日、年初恒例のJAHIS新春講演会および賀詞交換会をイイノホール&カンファレンスセンター(東京・千代田区)で、対面方式での開催を4年振りに行った。  第1部となる講演会では、JAHIS総務会長の下山赤城氏の挨拶の後、同運営会議議長の大原通宏氏が「2024年の年頭に…

メドレーとグロービス・キャピタル・パートナーズ/「なぜいま医療DXが必要なのか?~医療DXの現在地とこれから~」セミナーレポート(2024.2.20)

 メドレーとグロービス・キャピタル・パートナーズは、1月18日、メドレー本社(東京・港区)にて、メディア向けセミナー「なぜいま医療DXが必要なのか?~医療DXの現在地とこれから~」を開催した。  同セミナーには両社から1名ずつが登壇。最初に、グロービス・キャピタル・パートナーズの福島智史氏が「医療DXを取り…

日本放射線腫瘍学会第36回学術大会レポート(2023.12.15)

■JASTR02023─展示会場にも多くの関係者が集う  11月30~12月2日、日本放射線腫瘍学会(パシフィコ横浜ノース)に合わせ、展示会も開催され、多くの関係者を集めた。以下に、小誌が注目する企業を紹介する。  ビードットメディカルでは陽子線治療装置の模擬装置が展示された。同社の古川氏によれば、「数年後の実用化」…

第43回医療情報学連合大会レポート(2023.12.15)

■テーマは「医療情報の安全な流通と活用」―時代を反映した講演が人気博す  第43回医療情報学連合大会(第24回日本医療情報学会学術大会)が2023年11月22~25日、神戸ファッションマート(神戸市東灘区)で開催された。大会長は松村泰志氏(大阪医療センター)。同大会は、現地開催に加えオンライン配信を含むハイブリ…

キヤノン・キヤノンマーケティングジャパン/キヤノンEXPOを8年ぶりに開催

 キヤノンとキヤノンマーケティングジャパンは、「Canon EXPO 2023」を、10月17~20日、東京と横浜で開催した。「Canon EXPO」は、2000年に開始し5年ごとに開催されてきたイベントであるが、2020年はコロナ禍の影響で中止になったことから、今回が5回目になる。キヤノングループの新製品群や先進技術、ソリューションをビ…

キヤノンメディカルシステムズ/スポーツ医療の最前線と可能性─現場からの証言

 キヤノンメディカルシステムズは、ラグビーワールドカップ2023に合わせ、9月10日、KABUTO ONE(東京・中央区)にて、「Global Sports Medicine Forum2023」を開催した。「スポーツ医療の最前線」をテーマとし、スポーツ医療関係者約100名が参加した(Webでも同数が参加)。  冒頭、瀧口登志夫社長が登壇しつぎのように…

国際モダンホスピタルショウ2023/医療情報システムを中心に昨年を上回る来場者を迎え、盛況裡に終了

 医療・介護・福祉関連製品を展示した国内最大のイベント「国際モダンホスピタルショウ2023(主催:一般社団法人日本病院会/一般社団法人日本経営協会)」が、7月12日から14日までの3日間、東京・有明のビッグサイトで開催された。また、7月31日まで、オンラインでの展示も併せて行わる。  新型コロナウイルス感染症が…

富士フイルム/グループ全体のDX推進指針と具体的事例を紹介

 富士フイルムは7月6日、本社(東京・港区)でDXに関する報道向け説明会を開催した。同説明会では、富士フイルムホールディングス執行役員CDO ICT戦略部長の杉本征剛氏と、富士フイルム執行役員 メディカルシステム開発センター長で富士フイルムホールディングスICT戦略部次長の鍋田敏之氏が登壇し、富士フイルムグルー…

TOPへ