エム・シー・ヘルスケア/次世代に向けた持続的な医療のあり方を討議(24.11.25)
エム・シー・ヘルスケアは11月1日、品川インターシティホール(東京・港区)にて、「第25回病院の経営を考える会」を開催した。今回のテーマは「次世代に向けた持続的な医療のあり方」。午前中に3ワークショップを同時開催し、午後は講演1、2それぞれの終了後に進行役と登壇者によるディスカッションが行われた。
ワークショップ1は、竹田陽介氏(病院マーケティングサミットJAPAN)が「マーケティング視点から考える『愛され病院』のつくり方」について講演。同2は、篠原直樹氏(HITO病院)が「スマホ活用による組織変革と病院DX最前線」、同3では西 誠氏(Goldratt Japan)が「異業種から学ぶ! 全体最適のマネジメント」をテーマに講演を行った。
午後開催の講演第1部は、「持続可能な社会保障制度」をテーマに2演者が登壇。最初に太田圭洋氏(名古屋記念財団)が、「持続可能な社会保障制度-医療提供体制の持続可能性と財源-」を演題に講演した。同氏は、令和6年度診療報酬改定と病院経営の関連などを説明した後、現在行われている医療提供体制の改革について、人材確保をはじめ対象項目を具体的に挙げて述べた。
小黒一正氏(法政大学)は、「人口減少とインフレ下での医療財政の課題-『成長率調整メカニズム』の枠組み構築も視野に-」をテーマに講演。インフレ下での診療報酬改定や人口減少と医療費の関係などにおける課題を明らかにした上で、その解決のヒントについて語った。
講演後のディスカッションでは、神野正博氏(董仙会)が進行を担当。話題は診療報酬改定の物価・GDPスライド制への検討など多岐に亘り、会場からも質問が積極的になされた。
講演第2部は神野氏がまず登壇し、「災害からの復興と創造~能登半島地震を経験して~」をテーマに講演。同氏は能登半島の被災概況を述べた後、東日本大震災の教訓による病院の強靭化と成果を紹介。過疎地の復興に求められる要件として、「これからは住民500人で造れるもの(インフラ)を考えないとならない。その意味では、『コンパクトタウン』の観点も必要ではないか」と提言した。
次に植田信策氏(石巻赤十字病院)が、「災害サイクルと医療再編 東日本大震災への対応より」について語った。同氏は東日本大震災直後の救助活動を紹介した上で、長期化した避難所生活で直面した健康被害などの新たな課題への対処を強調。医療圏の復興と創造を考えるに当たり、「医療従事者の確保難や病院規模縮小の中で、災害対応体制をどのように維持していくかが課題」と結んだ。
最後に岡本全勝氏(市町村職員中央研修所、元復興庁事務次官)が「東日本大震災 人口減少下での災害復旧 国土の復旧から生活の再建へ」と題して講演。同氏は、「街を被災前に戻せたとしても、人口減少下ではそれに起因する“無駄”が生じる」とし、「公共インフラと住宅整備という従来の政府主導の復旧から一歩進み、産業・なりわいの再生、コミュニティの再建が重要」と述べた。
続くディスカッションの進行役は小西竜太氏(エム・シー・ヘルスケアホールディングス)が務め、演者より被災からの復興と創造に必要な要件として、「コミュニティ力」が挙がった。また、コミュニティにおける生活に密着した医療の提供・病院の運営についても、さまざまな意見が交わされた。