第26回医療情報学会春季学術大会/テーマのビッグデータだけでなく、セキュリティ対策も議論
6月30日から7月2日までの3日間、「第26回医療情報学会春季学術大会 シンポジウム2022 inせとうち」が岡山コンベンションセンター(岡山市北区)で開催された。大会長は横井英人氏(香川大学医学部付属病院 医療情報部)、テーマは「ビッグデータ再考-現在・過去・未来」。
7月1日に行われた開会式において横井氏は「オンライン開催では十分な議論を尽くせないこともあり、現地開催となる今回、活発な議論を期待したい。今年のテーマは“ビッグデータ再考”だが、それだけでなく、昨年末からサーバーセキュリティの問題がクローズアップされてきた。そこで、サイバー攻撃に関するセッションも加えたので、活発に議論してもらいたい」と挨拶した。
開会式では、2021年度学術奨励賞に関する表彰式も行われ、優秀口演賞3名、優秀ポスター賞1名、優秀HYPER DEMO賞1名、研究奨励賞3名が表彰された。
開会式直後には、大会長講演「ビッグデータ再考-今、我々がするべきこと」が行われた。演者の横井大会長はまず、昨今のサイバーセキュリティの問題について触れ、「安全管理ガイドラインによると、過失による情報開示・漏洩も対象としていると解される。サイバーアタックでは病院側は被害者だが、患者にとって病院側は加害者の立場になってしまう。公共性に基づく責任を果たすべく、最低限のガイドラインへの準拠を確実に行い、さらに推奨されるガイドラインのレベルに到達すべく、取り組んでいく必要がある」と問題提起。
次いで、Real World Data(RWD)とReal World Evidence(RWE)のデータの質について触れ、「RWD・RWE実現の条件として、セキュリティ・個人情報保護を実現したシステムの提供、電子カルテシステムとデータの標準化、元データの正確性向上が必要」と語った。
大会長講演後には、大会企画セッション1「ビッグデータに関する行政施策の方向性」が行われた。同セッションでは、最近クローズアップされているサイバー攻撃に対するセキュリティの問題や、ビッグデータの取り扱いの問題についての行政施策について、3名の行政官による講演が行われた。
今後の行政施策を解説
まず、田中彰子氏(厚生労働省 医政局)が「厚生労働省の最近の取り組み」と題して講演。データ活用の基盤作りや医療機関におけるサイバー対策などへの厚労省の取り組みを紹介した。
次いで、佐藤秀紀氏(経済産業省商務情報政策局)が「サイバーセキュリティお助け隊について」と題して講演。2021年度より中小企業のサイバーセキュリティ対策に必要な各種サービスを提供する「サイバーセキュリティお助け隊サービス」制度の内容について説明した。
最後に姫野泰啓氏(内閣府 健康・医療戦略推進事務局)は「次世代医療基盤法の施行5年後見直しについて」と題して講演。姫野氏は、2018年に施行された次世代医療基盤法の概要を説明。同法が5年後に見直されることについての動きについて紹介した。
午後には参加企業との共催によるランチョンセミナーが開催された。 このうち、ランチョンセミナー2「FHIRを用いた臨床研究における医療情報活用」(座長:木村映善氏・愛媛大/演者:太田恵子氏・大阪公立大)については、次号(小誌9月号)にて詳細を報告する。
特別講演では、中島直樹氏(九州大学病院)が「日本の医療情報に足りないもの」と題して講演した。中島氏は、現在の電子カルテシステムにおける課題について説明。さらに、自身の専門である生活習慣病の治療法について、食事・運動・薬剤に加え、PHRや治療アプリを活用した「情報療法」が4本目の柱になるだろうと語った。
次回の第27回日本医療情報学会春季学術大会(シンポジウム2023)は、2023年6月29日(木)~7月1日(土)、沖縄コンベンションセンター(沖縄県宜野湾市)を会場に、平田哲生氏(琉球大学病院 診療情報管理センター)が大会長として開催の予定である。