放射線医学総合研究所/CTから医療被ばく情報を自動収集・解析するシステムを開発
独立行政法人放射線医学総合研究所(以下、放医研)は、1月30日、国内における医療被ばくの実態を把握することを目的として、医療機関およびメーカーと連携し、CTなどの画像診断装置から医療被ばくに関する情報を収集して、データベース化するシステムを稼働させたと発表した。
放射線診断による被ばく線量の適切な低減を進めるために参考とするところの「診断参考レベル(DRL:Diagnostic Reference Levels)」の使用が国際放射線防護委員会(ICRP:International Commision on Radiological Protection)により勧告されているが、日本においてはDRLの設定がなされていない。
そこで放医研は、各医療機関の画像診断装置、あるいはPACSに格納されているデータを収集するツールと、各画像診断装置メーカーが開発しているデータ収集支援ツールを用いて、自動的に医療被ばくに関連するデータを収集して、データベース化する試みを5つの医療機関と連携して開始すると発表した。
第1段階としては、放医研が開発した収集ツールとGEヘルスケア・ジャパンが開発し現在市販されている支援ツールを用いて、2014年10月より東北大学病院と大阪警察病院のデータ収集を開始しており、1月下旬には放医研のデータベースに情報を格納する予定である。収集された情報は、分析を行って診断参考レベルなどの算出に利用されるほか、各協力機関は他施設の情報との比較参照をWeb上で行うことができ、各医療機関における被ばく線量のばらつきの低減も期待できる。
その他、みやぎ県南中核病院、埼玉医科大学総合医療センター、北里大学病院と連携が決定しており、2015年度以降に20施設程度への拡大を見込んでおり、15年度末までに30万件程度のデータ収集を目指しているという。
データの内容については、プライバシーに配慮して、被ばく線量に関するデータおよび患者の生年月日と性別等、患者を特定できないように収集する。
島田義也氏(放医研)は、「将来的には、患者個人の医療放射線被ばく線量の管理体制へ発展させることを視野に、国内全域のデータ把握を目指す」と述べ、システム開発を担当した奥田保男氏は「CTだけに留まらず、将来的にはIVRなどのデータも収集し、患者の医療被ばく以外に術者被ばくについてもデータを収集していきたい」とコメントした。