HOSPEX Japan 2015/第44回日本医療福祉設備学会
病院/福祉機器に関する展示会「HOSPEX Japan」は、11月25~27日の3日間、東京ビッグサイト(東京・江東区)で開催された。
主催は、日本医療福祉設備協会と日本能率協会で、来場者は前回より244人増の2万2071人。400社700ブースの展示や講演会、および「医療経営」、「病院・福祉給食」、「医療機器安全管理」、「リハビリ・介護」、「看護」、「慢性期医療」などに分かれた各セミナーを計70以上開催し、医療・看護・介護が直面する課題に迫った。
「介護ロボットコーナー」では、日本医療研究開発機構(AMED)ロボット介護機器開発・導入促進事業で開発されている移乗・移動・見守り支援のロボットを展示し、その水準の高さを来場者にアピールした。
第44回日本医療福祉設備学会は、11月25・26日の両日、東京ビッグサイト会議棟で、「超高齢社会に立ち向かうホスピタルエンジニアリング-医療福祉施設の再編を視野に入れて」をテーマに開催された。学会長は、小室克夫氏(聖路加国際大学施設課マネジャー)。
講演・シンポジウム・一般演題の内容は、医療・福祉施設の再編を視野に入れ、給排水・衛生・空調・電気・通信・医療ガスをはじめ、各種医療・福祉設備はどうあるべきかを問うものが多かった。
<HOSPEXシンポジウム>
医業経営セミナーシンポジウムは、「地域包括ケアの地域連携-福島県の場合」をテーマに、福島県医療福祉情報ネットワーク協議会事務局アドバイザーの柴田真吾氏(市立大村市民病院)と、同協議会理事の星 北斗氏(星総合病院)が講演を行った。
柴田氏は、現状の地域医療連携ネットワークの広がりと問題点を指摘した。星氏は、福島県内の医療機関・薬局・介護施設などで医療情報の共有を可能にした「キビタン健康ネット」の有用性を説き、「福島県の医療・福祉情報ネットワーク環境の整備と利活用を進めることによって、医療の質や安全性の向上を図り、患者中心の地域医療・福祉向上への貢献ができる」と、ネット設立の目的を述べた。
<HOSPEXセミナー>
HOSPEX会場では、全日本病院協会と日本医療法人協会との共催セミナーが行われ、11月27日には高橋 肇氏(高橋病院理事長/全日本病院協会常任理事)が、「地域包括ケアシステム時代におけるICTの上手な活用法」と題して講演。高橋氏は、次期診療報酬改定に触れ、「自院のことだけを考えていると点数が落ちる時代」と述べ、地域包括ケアシステム整備の重要性を強調。ICT技術を用いることで、どのように生産性を高められるのか、地域の質をどのように高めるのか、どのように生涯社会の実現に貢献できるのか、高橋病院における地域医療連携ネットワークサービス「ID-Link」や、見守りシステム「どこでもMy Life」を使った具体的事例を交えて説明した。
病院・福祉給食セミナーでは、石川祐一氏(日立総合病院栄養科長)が、「今、求められる病院食運営マネジメントシステム」を講演。病院の栄養部門の課題として、入院患者の食事療養費自己負担増、平成28年度診療報酬改定、労働力不足の3つを挙げ、それぞれに対して、病院スタッフ・患者への周知、栄養指導にかかわる点数の見直し要望、施設に合わせた配食方法の検討が必要であるとした。また、栄養部門の管理者は、情報の先取り、情報を職場にどう反映させるか(PDCAサイクルの活用)、結果を出すこと、が重要であると述べた
<HOSPEX特別講演会>
笠松眞吾氏(福井大)は、11月27日に「GS1とICTで切り開く手術医療の将来像」と題して講演した。GS1(Global Standard ONE)とは、国際規格を設計・策定する国際組織で、現在医薬品および医療機器の標準バーコードとしてGS1データバーの導入が進められている。笠松氏は、GS1登場に至る経緯を紹介。GS1の有用性を説明し、GS1とICTが融合する際のメリットについて、福井大病院における総合滅菌管理システム等、GS1実装の事例を取り上げて説明した。
<第44回日本医療福祉設備学会>
・学会 学会長講演
学会初日の11月25日には、開会式に引き続いて小室克夫学会長が学会長講演を行った。題目は、「超高齢社会に立ち向かうホスピタルエンジニアリング」。小室氏は、聖路加国際病院の関連施設改築などを例にして、よりよいサービス提供を得るために建築業者をパートナーとしていかに行うべきかを具体的に示した。そのキーワードとして、施工者選びに対し「自分の足、目、耳で情報の収集・確認を行うこと」「瑕疵期間、支払い開始時期、最終支払いなどについて、依頼者は常識を疑うこと」などを挙げ、担当者は設計や施工(建築・設備)に対しても細心の注意を払うべきだと述べた。
・学会 講演
11月25日に行われた講演2では、北垣和彦氏(大阪工業大)が「なぜ病院と介護施設は変われないのか?-ロボティクスとデザインによる改革の提案」を講演。工場における工程診断・改善の手法を取り入れた、松下記念病院へのロボット導入による業務改善活動への取り組みを紹介し、「成功した要因は、一緒に取り組んだ人への共感や理解の深まりがあったことだ」と述べた。さらに、病院・介護施設の生産性・効率性の向上が課題となっている現在、業務改善に向けイノベーションを起こすにはデザイン思考が有効であるとした。