インターシステムズジャパン/Healthcare Seminar 2016を開催
インターシステムズジャパンは、6月16日に東京コンファレンスセンター・品川(東京・品川区)で、“医療連携最前線~国内外の先進事例から学ぶ”がテーマとして、「InterSystems in Healthcare Seminar 2016」を開催した。
冒頭、インターシステムズ社日本統括責任者の植松裕史氏が挨拶し、「地域包括ケアという大きな方向性のもと、『医療連携最前線』というテーマで多彩な講師をお招きした。日本の医療ITの技術進歩に伴う医療連携や地域包括ケアなどの今後の方向性について知見を深めてほしい」と語った。
まず、基調講演として辻 正次氏(神戸国際大学経済学部教授)が、「地域情報ネットワークの最前線~海外調査から」を演題に講演した。はじめに国内の地域医療情報システムの現況を紹介した後、国内で導入が進まない理由として、巨額の資金が投じられていても費用対効果が低いことを指摘した。そして欧米のシステムとの比較のために、まず米国ニューヨーク市の地域医療情報ネットワーク「Healthix」を、次いで英国ロンドン市の同ネットワーク「CMC(coordinate my care)」を紹介した。
「Healthix」は、ニューヨーク市の1600万人の人口をカバーし、約500の医療機関が参加しているもので、同ネットワークの仕組みやその効果、経営基盤などについて説明した。 「CMC」は、がん患者の終末治療をサポートするために作られたもので、現在は救急サービスやかかりつけ医(GP)との連携などが加えられ、登録患者数は約3万人に達すると説明した。講演の最後で辻氏は、これらの事例と日本の事例とを比較検証していくことにより考えられる、地域医療情報ネットワークの発展モデルについての持論を展開した。
続いて、安細敏弘氏(九州歯科大学)が、「豊前市における在宅歯科訪問調査の意義と展望」を演題に講演した。安細氏は、福岡県豊前市で行われた口腔ケア事業について、①口腔サルコぺニアと全身の機能との関連、②感染予防、③QOLや社会生活への効果の3つの視点で調査。調査結果として「口腔ケアを通じて、在宅高齢者本人と家族への困りごとへの対応や健康意識の向上にプラスの効果が示唆された」ことを示し、今後も「生涯現役社会づくり」に向けた口腔ケアの貢献の可能性について明らかにしていきたいと述べた。
次に、河合敏充氏(日立製作所)が、「医療ビッグデータ活用に向けた診療情報集積基盤構築の取り組み」を演題に講演を行った。河合氏は、同社が取り組んだ国立病院機構の「国立病院機構 診療情報集積基盤(NCDA)」のデータ集積基盤を構築した事例を紹介。ビッグデータと標準化を組み合わせることで、医療における価値の創出と社会貢献を果たすことができると述べ、今後も診療情報の利活用ニーズに対し、さまざまな技術の提供による価値共創に努めたいとコメントした。
最後に、特別講演として藤田伸輔氏(千葉大学)が、「地域包括ケアと情報システム」と題して講演した。藤田氏は、「高齢化社会への対応は1940年代から始まっている」と述べ、世界および日本の医療改革の流れを紹介した。現在、政府が実施している地域包括ケアや病床機能報告の取り組みについて一定の評価を与えたが、病床数の過不足数の将来推計については、政府の推計に対してより厳しいシナリオを紹介して、全国的に病床が余ることを強調。今後は多職種連携と施設連携が重要になると述べ、千葉大学が行っている「千葉県脳卒中パス」の活動を紹介しながら、21世紀情報システムの課題について、①患者との双方向情報共有、②多施設間協働診療、③日常データの活用、④データ死蔵の防止-の4点を挙げた。
続けて、藤田氏が所属している千葉大学医学部附属病院地域医療連携部を実践拠点とする「千葉県地域連携の会」を通して県内の医療・介護連携を推進している情報システム「SHACHI(Social Health Assist CHIba)」の活動について紹介した。
講演会には、300名以上の聴衆が来場したが、講演だけでなくインターシステムズ社の製品を利用した医療用ソフトウェアに関する展示にも関心を寄せていた。