地域医療福祉情報連携協議会/2025年の連携ネットワーク像を包括的に提案
地域医療福祉情報連携協議会(RHW)の第9回シンポジウム・総会が、6月28日に御茶ノ水ソラシティカンファレンスセンター(東京・千代田区)で開催された。メインテーマは、「2025年を見据えた地域医療福祉情報連携ネットワークの推進」。
<第1部:来賓挨拶・協議会活動紹介>
同協議会名誉会長の邉見公雄氏の挨拶と、内閣官房・総務省・経済産業省の来賓挨拶の後、田中 博同協議会会長(東北大)が活動を報告。同氏は、恒常的活動としてコーディネーター養成講座の実施や地域医療情報ネットワークの効果検証調査事業を掲げた。
<第2部:特別講演>
赤羽根直樹氏(厚生労働省保険局)が、「医療ICTと診療報酬改定について」をテーマに講演。遠隔診療等に関する診療報酬評価の変遷などを示した上で、ICTを活用した医療連携や医療関連データの収集・利活用推進への取り組みについて述べた。
<第3部:基調講演>
大江和彦氏(東大・日本医療情報学会理事長)が、「これからの医療情報連携と活用」について講演。ICT機器が医療分野で身近になったことを示す事例として、機能素材「hitoe」を活用した長時間心電図モニタリングや脈の揺らぎを自己管理するスマホアプリ「hearTily」を挙げた。
<第4部:事例発表>
最初に村田昌明氏(村田歯科医院)が、「【北三陸ネット】~地域医療連携における歯科医の役割~」をテーマに講演。同氏は、その中で口腔ケアの強化による誤嚥性肺炎等の予防を目的とした歯科医と介護施設の連携事例を紹介。「医療の介入により、介護職員が口腔ケアの重要性をより強く認識するようになった」と述べた。
続いて水野正明氏(名古屋大)が、「【電子@連絡帳】地域包括ケアシステムの生活支援への展開と自治体連携」について講演した。同氏は、同大学が進める地域包括ケアシステムのICT型多職種情報共有基盤「電子@連絡帳」(医療・介護者用)と、「電子@支援手帳」(市民用)の開発を報告。また、もう1つ重要な「地域医療・地域包括ケアビジョン」の一例として自治体連携を挙げ、「2018年以降、地域包括ケアは高齢者から全ての市民対象へ、大きくシフトさせる必要がある」と今後の展望を述べた。
麻野井英次氏(射水市民病院)は、「再入院を阻止する先進的ICT遠隔モニタリングシステム」をテーマに講演。同院では、心不全患者の再入院予防目的のICTツールとして、2010年に遠隔モニタリングシステムを構築。同氏は、その経緯や概要を述べた後、今後の応用・展望として「他の疾患の再入院予防や、睡眠の質評価などへの展開が期待できる」と語った。
高橋 肇氏(高橋病院)は、「地域包括ケアシステム時代における情報ネットワークのあり方~医療・介護・生活支援一体型システムの構築~」を演題に講演。自院で構築した連携システムの成果と課題を語った。医療・介護・生活支援一体型システム「ぱるな」については、「スマホの代わりにテレビ画面を使い、在宅患者個々に適した形で生活プランを作り込めるようにしたい」と展望を述べた。
<第5部:パネルディスカッション>
まずモデレーターの田中 博氏が、「地域医療連携は地域医療再生基金によって大きく飛躍しており、それらと地域包括ケアを何らかの形で統合し、あらゆる情報を共有して医療・福祉を立て直していく必要がある」と述べた。次いで4人のパネリストが登壇し、活動等について講演した。
最初に原 量宏氏(香川大瀬戸内研究センター)が、「かがわ遠隔医療ネットワーク」と現在香川県を中心に行われている地域医療連携の現状を紹介。次に宮本正喜氏(兵庫医科大)が、「阪神医療福祉情報ネットワーク“h-Anshin(はんしん)むこねっと”」の取り組みを説明した。武藤正樹氏(国際医療福祉大)は、今回の診療報酬改定で削られた地域連携パスを今後どのように立て直していくべきかについてコメント。高橋紘士氏(日本福祉介護情報学会代表理事)は、「日本福祉介護情報学会の活動と地域と生活者のための情報連携のあり方について」と題して講演した。
講演の後、パネルディスカッションが行われ、会場の参加者を交えて地域医療連携に参加する診療所を増やすための工夫や、地域医療連携システムと地域包括ケアシステムをいかに結び付けるかなどが議論された。