日本画像医療システム工業/50周年を記念し、AIをテーマに「画像医療システム産業研究会」開催
日本画像医療システム工業会(JIRA)は、2017年12月13日に全電通労働会館(東京都千代田区)で、JIRA50周記念画像医療システム産業研究会を開催した。
JIRAでは、医療・行政・産業界の立場から医療機器産業の発展の方向性や課題の検討・理解を深めることを目的に第1回目の「JIRA画像医療システム産業研究会」を2011年に開催して以来計6回、毎年企画・開催している。2017年度は、創立50周年を記念して研究テーマを注目の「AIを用いた医用画像診断」とし、第3次AIブームと呼ばれ話題となっているディープ・ラーニング等の人工知能とその医療/医用画像診断への応用に焦点を当てた。
開会挨拶で小松研一氏(JIRA会長)は、「AIは毎日のように報道等でも聞かれるテーマ。医療応用への期待も大きいが、過大な期待による誤解も危惧されている。医療、特に画像診断において、医療の質の向上や医療安全に寄与するかを聞くために、著名な論者を招いた。AIの医療応用技術の発展と方向性を理解・認識することで、産業活動を活発に促進させる契機になればと祈念する」と挨拶した。
基調講演として伯野春彦氏(厚労省大臣官房)が、「厚生労働省の保健医療分野におけるAI活用推進について」と題した講演を行った。伯野氏は、人口の減少や高齢化社会の進展など保健医療を取り巻く環境について概説し、国として最適な医療提供体制の構築を進めていると述べた。そして、保健医療分野におけるAI活用について紹介。政府が立ち上げた「保険医療分野におけるAI活用推進懇談会」の概要と同会による報告書概要に触れ、同報告書の中でAI活用が比較的早く実用化されると考えられる領域として、ゲノム医療、画像診断支援、診断・治療支援、医薬品開発、介護・認知症、手術支援の6分野をあげて説明した。さらに、今後の対応について政府としてAI開発用クラウド環境の整備を進めるとともに中でも画像診断支援については、AI開発に関する調査を企業に働きかけていきたいと語った。
次に、国内におけるAI研究の動向として瀬々 潤氏(産業技術総合研究所)が、「人工知能研究の最前線~がんセンターとの共同研究の概要も交えて」と題して講演した。まず人工知能とはどのようなものかについて説明し、「AIの定義は実は曖昧」であるとしながら、医療分野における活用が期待されている現状を紹介した。一方で、その医療応用におけるAIの問題点として、ディープ・ラーニングを含む機械学習には膨大な量のデータが必要であること、医療系のデータは1人の被験者から取れる項目数が多く、加えて被験者数を確保することが難しく機械学習や統計が苦手とする“横長”のビッグデータとなってしまうこと、AIが診断結果等を導き出す過程の内容がブラックボックス化している点などを取り上げた。そして産業技術研究所と国立がん研究センターらが参加している平成28年度戦略的創造研究推進事業(CRESTプロジェクト)での研究開発の現状を説明し、深層学習を活用した大腸がんおよび前がん病変発見のためのリアルタイム内視鏡診断サポートシステムの開発等、今後のAI発展の展望を語った。
最後に、海外におけるAI研究の動向として藤田広志氏(岐阜大)が、「放射線医学領域におけるAI応用~RSNA2017の報告」と題して講演した。藤田氏は、はじめにCAD(コンピュータ支援診断)装置の開発の歴史と概要を紹介。ついでAIの現状に触れ、“第3次AIブーム”と呼ばれる今、CADの進化にAIが大いに寄与するのではという期待感が高まっていると述べた。そして昨秋のRSNA(北米放射線学会)では、AIに関するセッションや企業展示が多くの参加者の注目を集めたことを報告した。特にAIの技術開発手法であるディープ・ラーニングを用いた最新のCADシステムが数多く出展されている状況を説明。すでに10万症例規模のデータを用いたシステムも出展されており、AIを用いたCAD開発が急速に進んでいる現状について、未だ出展が少ない日本企業の対応への懸念を示すとともに、RSNA2018におけるAIのさらなる進展に期待していると語った。