第46回日本医療福祉設備学会
第46回日本医療福祉設備学会は、『人と技術の協働-ヘルスケア・エンジニアリングのあした』をメインテーマに、11月21日と22日の2日間にわたって東京ビッグサイト会議棟で開催された。学会長は、中山茂樹氏(千葉大大学院工学研究科 建築・都市科学専攻教授)。
講演・シンポジウム・HEAJ委員会企画・一般演題は、「感染対策」「地域包括ケア」「病院設備の安全確保」「手術室運用」「看護サポート」「院内無線通信監理」「空調設備」など多岐にわたり、各種医療・介護・福祉環境をさらによりよくするための具体的示唆を示すものが多かった。
<基調講演>
学会初日に行われた基調講演では、神野正博氏(恵寿総合病院)が、「地域包括ケア提供のためのICTを考える」をテーマに、地域包括ケアへのICTの関わりについて総論と各論から迫った。
神野氏は、これからの時代を「自助・互助・共助・公助に『頼る』ことから『覚悟』の時代になる」と前置きし、地域ケアシステムが発展し、地域包括ヘルスケアシステムへ移行すべきと述べた。ケアだけでなく、生活支援・介護予防など健康に関わる“ヘルスケア”が適切とし、この実現にICTは不可欠なものと述べた。その例として、自ら立ち上げた「けいじゅヘルスケアシステム」でのICTによる情報統合や利活用の具体的メリットを示した。
<学会シンポジウム>
この学会において6シンポジウムがプログラムされたが、2日目のシンポジウム3「手術を支える人と協働する技術」は、4セクションに分けられ5人の講師が演台に立った。
畔柳宏之氏(富士フイルム)は、「手術室における無線型FPD撮影システムの運用について」で同社CALNEO AQROについて、「超軽量移動型であり、高感度化技術、画像処理技術、X線技術を集結しており、手術場の新たなワークフローを生み出す」と述べた。
原口大輔氏(リバーフィールド)は、「鏡視下手術を支援するロボット技術」で「既存の手術支援ロボットとは異なり、省コストでコンパクト、かつ医師には重要な“力覚”を提示できるシステムを開発中で2020年での販売を目標にしている」と述べた。
<HEAJ委員会企画>
22日のHEAJ委員会企画③は、「病院内における無線通信の管理-正しい電波管理は医療ICT化の礎」をテーマに3講演が行われた。
平野友貴氏(総務省)は、「安心・安全な電波利用の推進に向けた取組」をテーマとして、病院内での携帯電話使用に関する指針の変遷や課題について述べた。
加納 隆氏(滋慶医療科学大学院大学)は、「医療機関で求められる電波管理者について」としたテーマで、医用テレメータの管理は誰が担当すべきかについて講演した。同氏は、その候補として臨床工学技士を中心に臨床ME専門認定士や医療機器安全管理者等を挙げ、「これらの連携および取り組む意欲のある人が重要」と語った。
花田英輔氏(佐賀大学大学院)は、「病院内に飛び交う電波とその伝搬」と題し、医療ICTの現況や電波障害関連の建築の基礎知識等を踏まえた上で電波管理体制整備の重要性を強調した。